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コラム 2021.05.28

2020年の民法改正が賃貸借契約にもたらす影響

2020年4月に民法が改正されました。1896年の制定以来、実に120年以上を経ての大幅改正です。賃貸借契約においても、これまで明確に規定されていなかった部分が明文化されたり、新たなルールが設けられたりといった見直しが行われました。
今回は、2020年4月の民法改正が賃貸借契約にもたらした主な影響について、「保証債務」「賃貸借期間中」「退去時」の各分野に分けてご紹介します。

【目次】
1.保証債務に関連する改正ポイント
2.賃貸借期間中の事項に関連する改正ポイント
3.退去時の事項に関連する改正ポイント
4.改正民法の注意点
5.今回のまとめ

保証債務に関連する改正ポイント

万一の場合の保証債務に関連する改正ポイントには、次のようなものがあります。

保証額の極度額に関するルールの新設

連帯保証人が個人である場合の保証額の極度額(借主に何かあったときに連帯保証人が負担する可能性のある債務上限額)が新たに設けられました。契約書内に極度額が記載されていない場合、保証契約は無効となります。改正前は、連帯保証人は借主の債務を無制限に肩代わりしなければなりませんでした。しかし、改正後は、個人の連帯保証人については上限額を超える負担は求められません。

借主から連帯保証人への情報提供ルールの新設

事業用物件において個人の連帯保証人を立てる場合に、借主の財産状況、収支状況、債務額とその支払状況、担保提供があればその事実と内容の情報提供を義務付けるルールが新設されました。
改正前は、借主の経済状況が不明のまま保証契約が結ばれることが大半でした。しかし改正後は、借主の経済状況を考慮した上で連帯保証人を引き受けるかどうかを判断できるようになりました。

借主の債務の履行状況の情報提供ルールの新設

連帯保証人からの依頼があれば、借主の賃料の支払い状況などに関する情報提供を行なうことを貸主に義務付けるルールが新設されました。
改正前は、連帯保証人は借主の賃料滞納の事実などをタイムリーに把握することがしばしば困難でした。しかし改正後は、連帯保証人は借主の賃料支払い状況の情報提供を貸主に対し求められるようになり、借主の賃料滞納などの事実を早めに知ることができるようになりました。

賃貸借期間中の事項に関連する改正ポイント

物件を借りている期間内の事項に関連する改正ポイントには、次のようなものがあります。

借りている物件の修繕に関するルールの明文化

借りている物件に修繕が必要な場合、どのような要件を満たしていれば借主自ら修繕することが認められるかのルールが明文化されました。
次の2つのケースのいずれか(もしくは両方)に当てはまれば、借主が自分で修繕してもその責任を問われません。

① 修繕の必要性を貸主に知らせてある、または貸主が既に認識しているにもかかわらず、なかなか修繕対応してもらえない。
② 差し迫った事情がある。

借りている物件の譲渡に関するルールの明文化

借りている物件の所有者が途中で替わった場合の賃料の支払先の判断基準が明文化されました。
賃貸借契約が継続している最中に当該物件が譲渡され、所有者が替わったときは、原則として新しい所有者が貸主となります。ただし、貸主が当該物件の所有権移転登記を済ませていることが前提です。

退去時の事項に関連する改正ポイント

借主が物件を退去する際の事項に関連する改正ポイントには、次のようなものがあります。

退去時の原状回復義務に関するルールの明文化

退去時に原状回復(物件を入居時の状態に戻す)するに当たり、借主がどこまで費用を負担するのかの範囲に関する規定が明文化されました。
借主が原状回復義務を負うのは、当該物件を借りるようになってから生じた損傷で且つ通常損耗・経年変化ではないものに限られます。改正前にも同様の解釈がされていたとはいえ明確に規定されていたわけではなかったところが、改正により明文化されました。
ただし、賃貸オフィス・事務所といった事業用物件の場合、原状回復義務に関する特約が契約書に盛り込まれることがほとんどです。通常損耗であるかどうかを問わず、借主は契約書に明記されている通りの義務を負うことになります。

敷金・保証金に関するルールの明文化

入居時に差し入れた敷金・保証金の返還時期と、返還額の算出ルールが明文化されました。
物件が返還された時点で敷金・保証金の返還義務が貸主に生じ、賃貸期間中に発生した債務分を控除した金額が返還されます。改正前にも一般的に同様の解釈がされていたとはいえ明確に規定されていたわけではなかったところが、改正により明文化されました。
なお、賃貸オフィス・賃貸事務所といった事業用物件の場合は、あらかじめ定められた償却費も控除されます。

改正民法の注意点

民法が改正される前に締結された賃貸借契約については、改正前の民法が適用される点に注意が必要です。改正民法が適用されるのは、改正後に賃貸借契約が結ばれたケースに限られます。

今回のまとめ

今回の民法改正により、従来からの慣習や判例の内容が明文化され、また、連帯保証人が保護されるようになりました。今日の賃貸借契約において求められる内容、現代社会の実情にマッチする内容に見直されたといえるでしょう。

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