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コラム 2021.05.01

差押通知を受け取ったらオフィス・事務所の賃料は誰に支払うべきか


賃貸オフィス・事務所の入居者側の賃料滞納ばかりが問題視されがちですが、逆に貸主であるビルオーナーが倒産して入居者に影響が及ぶケースもあります。裁判所から賃料債権の差押通知を受け取って驚く入居者も少なくないでしょう。今回は、差押通知を受け取ったら賃料を誰に支払えばよいのかについて解説します。

【目次】
1.差押通知を受け取ったら、賃料は債権者に対し支払う
2.ビルが任意売却された場合の対応
3.ビルが競売にかけられ落札された場合の対応
4.退去を決めた場合の対応
5.今回のまとめ

差押通知を受け取ったら、賃料は債権者に対し支払う

差押通知を受け取ったら、原則としてその後の賃料は債権者に支払います。裁判所から届く賃料債権差押通知は、「賃料を請求するという貸主の権利を差し押さえました」という知らせです。融資の返済が滞った場合、担保となっている物件そのものだけでなく、同物件の賃料を請求する権利にも効力が及ぶため(物上代位)、賃料を支払う側である入居者にこのような通知が届きます。貸主が税金納付を怠った場合も同様に、貸主の財産である物件に加えその賃料の請求権も差し押さえられます。借金返済や納税に確実に充てられるようにするための賃料収入の差押えですので、入居者は、差押えを申し立てた債権者に対し賃料を支払うことになります。言い換えると、これまで通りに貸主に賃料を支払うことは禁止されます。
ただし、入居者の立場からすれば、これはあくまで「今後もオフィス・事務所を借り続ける場合」の話であり、状況次第で取るべき対応は変わってきます。差し押さえられたビルがどうなるか、入居継続を望むかどうかによって変わる対処法について、次章から詳しく見ていきましょう。

ビルが任意売却された場合の対応

差押え後、ビルが任意売却された場合、入居者側で特段の対応は必要ありません。差し押えられて競売にかけられた物件は、相場よりもかなり低い金額で競り落とされるのが一般的です。そのため、より多くの債権を回収したい債権者にとっても、債権残高を可能な限り減らしたいオーナーにとっても、競売よりも高く買い取ってもらえる任意売却のほうが望ましいといえます。
そして、幸いにも任意売却が成立した場合、ビルの新たなオーナーは、入居者との間の賃貸借契約もそのまま受け継ぐため、入居者側から見ると「貸主が別の人になっただけ」ということになります。契約内容に変更は生じませんので、不利益が発生することはありません。

ビルが競売にかけられ落札された場合の対応

ビルの任意売却が成立せず、競売にかけられて落札された場合、入居タイミングによって取るべき対応は変わってきます。

入居タイミングが根抵当権設定登記よりも前のケース

ビルが根抵当権設定登記されるよりも前(担保として設定されるよりも前)に入居している場合、たとえ競売でビルが人手に渡っても、前オーナーとの間に結ばれていた賃貸借契約は引き続き有効です。つまり、ビルが任意売却された場合と同様に、賃料の支払先が新オーナーとなるだけです。

入居タイミングが根抵当権設定登記よりも後のケース

ビルが根抵当権設定登記された後に入居していた場合、前オーナーとの間の賃貸借契約は無効となります。引き続き入居を望む場合は、新オーナーとの間で新たに契約を結ばなくてはなりませんし、新オーナーから明け渡しを求められた場合は明け渡さなくてはなりません。(明け渡しまで6ヶ月間の猶予が与えられます)

退去を決めた場合の対応

退去することを決めた場合でも、理屈から言えば、債権者または新オーナーに対し賃料を支払わなくてはなりません。しかし、現実的には「支払わない」という選択をすることになるでしょう。これは、損害を最小限に抑える手段といえます。
入居時に納めた保証金は前オーナーに支払ったものですので、退去時の返還については新オーナーではなく前オーナーに対し求めることになりますが、倒産した前オーナーに返還を求めることはまず無理でしょう。
しかし、退去時に未払い賃料が残っていれば、そうした不足分は保証金でカバーする前提となっているため、結果として保証金が返還されたのと実質的に同じとなるわけです。ただし、債権者が賃料不払いによる賃貸借契約解除を求めて提訴しないよう、近々退去する意図を債権者にあらかじめ知らせておく必要があるでしょう。

今回のまとめ

貸主の倒産などにより裁判所から差押通知を受け取ったら、その後の賃料は原則として債権者に支払います。ただし、ビルが任意売却されるか競売にかけられるか、入居タイミングがビルの根抵当権設置登記の前か後かによって、入居者の置かれる状況は大きく異なり、対処方法も変わってきます。決して珍しいわけではないビルオーナーの倒産の際には、入居者は自身の置かれた状況を冷静に見極めた上で対応する必要があります。

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