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オフィス・事務所の定着率を上げるための労働環境や福利厚生の考え方
少子高齢化による労働人口の減少によって深刻な働き手不足が加速する中、多くの時間とコストをかけて採用活動を行ってもなかなか社員が定着してくれないと悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。定着率の低さに頭を抱える企業の場合、まずは定着率を下げる要因をしっかりと理解することが重要です。
ここでは、オフィスや事務所における従業員の定着率を上げるためのポイントをご紹介します。
オフィス・事務所の定着率は生産性の維持のために重要
まずは、定着率の意味や計算方法、さらに、離職率との関係性について解説します。
定着率とは
定着率とは、入社者が時間経過を経てどのくらいの割合で会社に残っているかを表す数字のことです。企業や事務所によって期間は異なるものの、一般的に入社○年目までに在籍している者の割合を示します。
起算日は、年度始めの4月初日として設定し、年単位で計算するのが一般的です。
定着率の計算方法
定着率の計算方法は次の通りです。
定着率(%)=○年後の定着人数÷○年前の入社人数×100
例えば、3年前の入社人数が20名で現在の在籍人数が15名だった場合、入社3年目の定着率は75%となります。
ちなみに、新卒の採用者のうち3割は入社から3年以内に離職すると言われています。新卒採用を実施する際に開示が必要となる「青少年雇用シート」では、直近3年以内の採用者数と離職者数を掲載しなければなりません。
このように、優秀な採用者を増やすためには入社3年目の定着率は重要な指標となるのです。
定着率と離職率の関係
定着率と似たような用語として「離職率」があります。離職率とは、一定期間内にどれだけの離職者が発生したかを示す指標です。離職率は「100%-定着率」で算出できます。
定着した従業員数に着目している「定着率」に対し、離職した人数に着目しているのが「離職率」です。
定着率も離職率も、基本的に算出する期間に明確なルールはないため、企業が独自に決定しています。
定着率が向上するメリット
定着率が向上することで、企業や従業員にとってどのようなメリットがもたらされるのか考えてみましょう。
生産性の向上
定着率がアップすることで、離職者の多い状況と比較して社内にノウハウや実績がどんどん蓄積されるため、生産性の向上が期待できます。業務量に対して適切な人事配置ができるため、大きな負荷をかけることなくスムーズに、そして効率的に業務を行えるのです。
さらに、社員同士の人間関係も構築しやすくなるため、円滑にコミュニケーションを図れるでしょう。
業績の安定・企業イメージの向上
定着率を高めることによって労働力が安定することから、企業の経営や業績が安定しやすくなります。そのため、長期的な事業戦略を立てやすくなり、さらなる事業拡大にも大きく貢献するのです。
さらに、退職者や離職者が少ない会社として認識されることで、対外的なイメージアップにも繋がります。安定した質とスピード感で業務を進められることで、顧客からの信頼も獲得しやすくなるでしょう。
採用や教育コストを削減できる
定着率が安定することは、すなわち採用や教育にかけるコストの削減に繋がります。新たな人材を確保するためには、求人募集サイトへの掲載や採用活動などに莫大な資金が必要です。
さらに、新入社員に研修をする場合は1年間で1人あたり2〜3万円程度かかると言われており、既卒者に比べて莫大な研修費用がかかります。人材の入れ替わりが少なくなることで、人材採用や教育にかけるコストを節約できるのです。
従業員のモチベーション向上
定着率が高いことで、既存社員のモチベーションを高める効果があります。多くの社員が離職してしまうと、残された社員に負担が集中してしまいがちです。
たとえ、新しい人材を雇用できたとしても、即戦力として活躍してもらうためには時間やコストがかかってしまいます。
既存社員の定着率を高めることで業務量の調整もしやすいため、一人あたりの業務量も安定しやすくなるでしょう。自分の仕事に集中できるため、従業員のモチベーションアップにも高い効果が期待できるのです。
労働環境を改善するために不満要因を明確化
定着率が高まることによって様々なメリットがもたらされます。それに対し、定着率が低下すると様々なリスクが生じてしまいかねません。定着率が下がる原因について理解することで、従業員の離職を食い止められるでしょう。
ここからは、定着率が下がる主な要因について詳しくご紹介します。
給与や福利厚生に対する不満
給与や充実した福利厚生は、従業員にとって大きなモチベーションです。特に、労働の対価として得られる給与が低いと感じる場合は、転職を考えるきっかけになりかねません。
さらに、賞与や福利厚生などの恩恵が受けられない場合も同様に、離職率を高める大きな要因となってしまいます。
市場の相場とかけ離れた給与や福利厚生を設定している場合は、給与システムを抜本的に見直す必要があるでしょう。賃金の水準は、業務内容や相場を総合的に考慮した上で決定し、従業員が納得する金額に設定してください。
人間関係への不満
人間関係に問題があったり、険悪なムードが漂っていたりすることも定着率を下げる大きな要因です。例えば、パワハラなどで上下関係が非常に厳しい職場やコミュニケーションが取りづらい職場の場合は、人材の流出が激しくなります。
日頃から従業員との面談の機会を設けて、心理状態や悩みを共有するように心がけることが大切です。意見や質問があった場合に誰でも気兼ねなく発信・発言できる環境を整備するように心がけてください。
仕事内容に対する不満
給与や福利厚生には満足していても、離職を決断する方も一定数存在します。その場合、仕事内容に不満を感じているケースが少なくありません。
業務を通して達成感が得られない場合や責任と権限が適切でないと感じる場合は、仕事内容に対して不満を感じてしまう方も多いでしょう。
従業員にとってやりがいを感じられる仕事であるか、そして従業員が成長できる環境が整っているかを見直すことが大切です。
評価制度や能力開発、キャリアアップに対する不満
従業員全体を平等にチェックできる体制を整えることは非常に難しいことかもしれません。しかし、能力のある従業員であるほど、適切な評価を望んでいます。
評価制度は、報酬に繋がる非常に大切な内容であるだけに、従業員が不満に感じやすいところです。昇給や昇格の基準が曖昧だったり、能力開発やキャリアアップに力を入れていなかったりすると、納得できずに離職を決断する社員も増えてしまいかねません。
そのため、定着率を高めるためにも、公平で透明性の高い評価制度を構築するとともに、資格取得などの支援を行う能力開発やキャリアアップ支援も積極的に実施することが大切です。
充実した福利厚生によって労働意欲を高める
定着率を上げる施策を「リテンション施策」と言います。リテンションは、既存の従業員が社外への流出を防ぐことを意味しており、リテンション施策を行うことで定着率を高めることに繋がるのです。
ここからは、リテンション施策の例をご紹介します。
給与や福利厚生の充実
社内待遇に不満を抱えている従業員が多い場合は、給与体系や福利厚生などを改善するよう努めてください。
給与システムは、頑張った成果によって報酬を得られる「インセンティブ制度」や「奨励金制度」を導入することで、従業員のモチベーション向上が期待できます。
福利厚生に関しては、各種手当はもちろんのこと、自己啓発資金の援助や様々なサービスを割安で利用できる福利厚生サービスなどを取り入れて、企業に対するエンゲージメントを高めていきましょう。
ワークライフバランスの支援
残業の多さや休日日数の少なさに不満を感じる人も少なくありません。仕事よりもプライベートを充実させたいと考える人も年々増えていることから、ワークライフバランスを意識した支援策を考える必要があります。
ワークライフバランスを支援する手法としては、残業時間の管理や削減をはじめ、有給休暇の取得を促すことなどが挙げられます。
その他にも、様々なバックグラウンドを抱えた人材も取りこぼすことがないように、出産や育児休暇や介護休暇などの各種休暇を取得しやすい環境整備も重要なポイントです。フレックスタイム制度やテレワーク制度の導入なども含めて働きやすい環境作りを心がけてください。
人事制度の整備
頑張った分だけ昇給やキャリアアップが実現できるよう、成果がしっかりと報われるような人事制度を整備することも大切。さらに、社内でのキャリアパスが明確にわかるような評価制度を設けることも、従業員のモチベーション維持のために重要です。
「自己申告制度」や「社内FA制度」など新しい制度を取り入れながら、自社にマッチした人事システムを考えていきましょう。
能力開発の支援
成長を感じられない職場に魅力を感じるはずもなく、徐々にモチベーションは低下していく一方です。キャリアアップやスキルアップに関心を持つ優秀な社員ほど、離職したいと感じてしまう可能性があります。
人材が外部に流れてしまうのを防ぐためにも、従業員の能力開発を支援する仕組みを整えることが大切です。例えば、資格取得に向けた勉強会を実施したり、外部講師を招いたセミナーを実施したりするなど、従業員が成長できる環境を整備するよう意識してください。
今回のまとめ
今回は、オフィスや事務所における従業員の定着率を高めるためのポイントについてご紹介しました。定着率を高めることにより、生産性の向上や企業のイメージアップ、採用や教育にかかるコスト削減など様々なメリットが得られます。
優秀な社員が外部に流出してしまわないためにも、定着率を高めるために重要なリテンション施策を行いながら、従業員の定着率とともにエンゲージメントも高めていくことが大切です。
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