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オフィス・事務所に必要不可欠な家具は種類による税法上の取り扱いが異なる
オフィスや事務所で使用する家具は、種類によって税法上の取り扱い方が異なります。経費処理の際は、家具の種類ごとに勘定科目も変わるので注意が必要です。また、家具の経費処理を行う場合、減価償却などの法的な手段を活用することで高い節税効果を得られるという点にも注目してみてください。
今回は、オフィス・事務所で家具を使用する際の税法上の取り扱い方や、家具の経費処理の方法および節税効果を高めるポイントをご紹介します。
税法上の家具の取り扱いは3種類
オフィスで使用する家具は、建物の一部として扱われるか、あるいは備品として扱われるかで勘定科目が異なります。オフィスで家具を使用する際は、経費処理や資産計上において税法上の分類を間違わないようにすることが大切です。
税法上の家具の取り扱いは「組立家具」「オーダー家具」「作り付け家具」の3種類に分けられます。家具の分類のポイントは、その家具が建物と密着しているかそれとも独立しているかどうかです。建物に密着している家具は「建物の一部」とみなされ、建物に密着していないものは「備品」とみなされます。
それぞれの家具の特徴と、税法上の分類について詳しく見ていきましょう。
組立家具
組立家具は、購入者が自分でパーツを組み立てて作る家具のこと。ホームセンターなどで売られている家具の多くは、組立家具です。
組立家具は建物と密着しておらず、独立した家具としてみなされるので税法上は備品とみなされます。オフィスを借りたあと、組立家具を別個で購入してオフィスに運び入れた場合はすべて備品です。
オーダー家具
オーダー家具は、サイズやデザインを注文して作る家具のことです。好みのデザインと大きさで設計できるので、オフィスのデザイン性や機能性を高めたいという理由でオーダー家具を選択する事業者は少なくありません。
オーダー家具は組立家具と同様に、建物と密着していない独立した家具なので税法上は備品とみなされます。
作り付け家具
作り付け家具は、オフィスの壁や床に直接取り付ける家具のことです。工務店などに依頼をして、オフィスに合った専用の家具をオーダーして作ります。オーダーをして作るという点ではオーダー家具と同じですが、作り付け家具の場合は壁や床に直接取り付けるので、家具として独立していないという点がポイントです。
建物に直接取り付ける家具(建物に密着している家具)は、備品ではなく「建物の一部」としてみなされます。そのため、税法上の勘定科目も「建物」になるのです。
賃貸物件における作り付け家具の税法上の扱い
賃貸オフィスの場合、「壁や床に直接家具が取り付けられているオフィス」と「家具がすべて独立しているオフィス」とでは、税法上の扱いが異なります。また、オフィスを賃貸してから家具を購入する場合は、「新たに作り付け家具を設置する場合」と「独立した家具を購入する場合」とで、取得価額の差によっても税法上の扱いが異なるのです。
具体的には、賃貸したオフィスに新たに設置する作り付け家具の取得価額が10万円未満(青色申告をしている場合は30万円未満)なら、その家具は建物の一部ではなく備品として扱うことができます。左記の金額以上で作り付け家具を新たに設置した場合は、家具は建物の一部としてみなされるのです。
オフィス・事務所で使用する家具の経費処理や資産計上の具体的な方法
オフィスで使用する家具の経費処理を行う場合、その家具がどの勘定科目に該当するかによって計算方法が異なります。家具の勘定科目は「消耗品」「工具器具備品」「一括償却資産」の3つです。それぞれの勘定科目の特徴や計算方法について解説します。
勘定科目について
経費処理を行う際は勘定科目の設定は欠かせません。ただし、勘定科目は法的に何かしらのルールが定められているわけではないので、基本的に各企業によって独自のルールを設定していることが多いのです。
国税庁が例として挙げている定義をご紹介すると、取得価額が10万円未満または使用期間が1年未満の場合は「消耗品」、取得価額が10万円以上または使用期間が1年以上のものは「工具器具備品」となっています。
ここでは、この定義に合わせて、家具の科目分けについて解説します。
家具の勘定科目
ここから3つの勘定科目ごとに、仕訳の記載例を具体的に見ていきましょう。
消耗品
家具の取得価額が10万円未満または使用期間が1年未満の場合は、勘定科目は「消耗品」になります。例えば、5万円の会議用テーブルを家具店で購入した場合、仕訳の書き方は以下の通りです。
借方 / 消耗品費 50,000円
貸方 / 現金 50,000円
摘要 / ~家具店 会議用テーブル
工具器具備品
家具の取得価額が10万円以上の場合は、勘定科目は「工具器具備品」となり、有形固定資産として資産計上することになります。有形固定資産とは、企業が事業・営業のために長期間にわたって所有している財産のことです。
家具を工具器具備品として資産計上する場合は、耐用年数に合わせて減価償却をしなければなりません。オフィス家具(事務机・事務いす・キャビネットなど)の耐用年数は、主に金属製のものは15年、金属製以外のものは8年となります。
例えば、24万円の会議用テーブル(金属製)を銀行振込で購入した場合、仕訳の書き方は以下の通りです。
借方 / 工具器具備品 240,000円
貸方 / 普通預金 240,000円
摘要 / ~家具店 会議用テーブル
24万円の金属製の会議用テーブルの場合、耐用年数は15年なので15回に分けて減価償却すると、1回に計上できる減価償却費は16,000円です。よってこの場合の減価償却の仕訳は以下のようになります。
借方 / 減価償却費 16,000円
貸方 / 工具器具備品 16,000円
摘要 / 減価償却費の計上(会議用テーブル)
一括償却資産
家具の取得価額が10万円以上の場合は工具器具備品に該当しますが、取得価額が「10万円以上~20万円未満」に収まる場合は、耐用年数に関係なく「一括償却資産」として計上できます。一括償却資産では、3年で均等償却することが可能です。
例えば、18万円の木製の会議用テーブルを銀行振込で購入した場合、仕訳の書き方は以下のようになります。
借方 / 一括償却資産 180,000円
貸方 / 普通預金 180,000円
摘要 / ~家具店 会議用テーブル
この場合の減価償却の仕訳は、1年に1回ずつ(計3年)必要になります。
借方 / 減価償却費 60,000円
貸方 / 一括償却資産 60,000円
摘要 / 減価償却費の計上(会議用テーブル)
家具の経費処理や資産計上を正しく処理することで節税効果も
オフィスで家具を使用する際、減価償却を活用することで節税効果が得られます。減価償却による節税・財政面でのメリットと、少額減価償却資産の特例について詳しくご紹介しましょう。
減価償却とは
減価償却とは、長期間にわたって使用される固定資産の取得価額を、一定の方法で分割して費用計上する仕組みのことです。減価償却に該当する固定資産としては、「事業で使用する建物」「建物に設置された機械設備」「器具備品」「車両運搬具」などがあります。
減価償却のメリット
減価償却のメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
法人税の節税
購入した家具を経費として複数年にわたり計上できれば、それだけ利益を抑えることができます。利益を抑えることができるということは、同時にその利益にかかる法人税を抑えることができるため、節税効果が期待できるのです。
一括償却資産で財務負担を軽減
家具の取得価額が「10万円以上~20万円未満」であれば、取得価額の合計額を3年分に分けて計上することが可能です。この方法を「一括償却資産の損金算入」といいます。
上記に記載した「18万円の木製の会議用テーブル(耐用年数8年)」を例にすると、一括償却資産の損金算入をせずに減価償却費を計算した場合「180,000円÷8」となるので、1年で計上できる金額はわずか22,500円です。これに対して、一括償却資産の損金算入を利用すると、1年に計上できる金額は60,000円なのでその差はなんと3倍近くになります。
このように、一括償却資産の損金算入の活用で1年に計上する減価償却費を大きくすれば、それだけ法人税を節税でき、同時に企業の財務負担を軽減することが可能なのです。
財政状況を正確に把握できる
減価償却は、節税対策だけでなく財政状況の把握をするという意味でも重要です。減価償却を実施すると、毎年の利益を正確に把握することができるので、現在の財政状況を踏まえて適切な経営戦略を練ることが可能になります。
少額減価償却資産の特例
ある一定の条件を満たす中小企業者・個人事業主は、少額減価償却資産の特例を受けることができます。少額減価償却資産の特例を受けることで、取得価額30万円未満の減価償却資産を1年に全額一括で経費計上することが可能です。
少額減価償却資産の特例に該当する中小企業者・個人事業主の条件は以下の通りです。
・青色申告を申請している法人または農業協同組合など
・常時使用する従業員の数が500人以下であること(連結法人は除く)
なお、この特例では、1年に経費計上できる金額は「取得価額を合計して300万円まで」という制限があります。取得価額の合計が300万円を超えた場合は、取得価額の合計が300万円を超えるまでの少額減価償却資産を経費計上するという形になるのです。
少額減価償却資産の特例に該当する減価償却資産は、取得年に実際に使用されたものに限られます。また、少額減価償却資産の特例を受ける場合は、確定申告の際に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付して申告する必要があります。
今回のまとめ
新たにオフィス・事務所を賃貸する場合、家具付き物件とそうでない物件のどちらを取得するかで悩むことも多いのではないでしょうか。家具付き物件の場合、新たに家具を用意する手間が省けるというメリットがある一方、オフィスを一からデザインできないというデメリットもあります。
税法の面で見てみると、オフィスで使用する家具は組立家具・オーダー家具・作り付け家具で扱い方や勘定科目が異なるという点や、減価償却の活用で節税対策ができるなど、押さえておきたいポイントは様々です。
オフィス仲介会社を利用すれば、物件の情報を詳しく教えてもらえるだけではなく、税法上のアドバイスもしてくれます。税法上の家具の取り扱いや経費処理の方法などを踏まえて物件を探したいときは、オフィス仲介会社にぜひ相談してみましょう。
名古屋に本社を構えるオフィッコスは、オフィスや店舗などの賃貸仲介を専門に扱っている企業でございます。2012年の設立以来、多くのお客様からご利用いただき、ご希望に沿える物件をご案内できるよう、日々情報収集に努めております。常時50,000件以上の物件情報を有しており、ホームページに掲載していない情報も多数ございますので、オフィス・店舗の開設や移転を検討されている事業者さまは、まずは一度お気軽にお問い合わせください。