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オフィス・事務所のパーテーション設置工事と消防法の関係
ビルなど建物の一室を借りてオフィスや事務所として利用する際には、用途に応じてパーテーションで空間を仕切ることを検討するのではないでしょうか。パーテーションは設置コストが抑えられるだけでなく、壁のようにしっかりと空間を仕切れるため、その用途は多岐にわたります。
一方、パーテーションの設置時にはいくつかの点に注意しなければならず、消防法における取り決めもそのひとつです。ここでは、パーテーションの設置工事と消防法の関係、設置時の注意点などについて解説します。
パーテーション設置は消防法に基づく手続きが必要
パーテーションを設置すると、消防法に基づいた手続きを行う義務が発生します。これはオフィスや事務所内でパーテーションを設置する場合も例外ではなく、最低限のことは把握しておかなければなりません。
必要な手続きの内容と罰則
パーテーションの設置に伴って行わなければならない消防法上の手続きは、「防火対象物工事等計画届出書」の提出です。この書類には住所や代表者名、用途などの基本情報のほか、パーテーションを設置する部屋の平面・立体・断面の各図面を記載し、提出しなければなりません。特に図面は正確なものでなければならず、パーテーション設置に際しては設置場所などを正確に記録しておく必要があります。
これらの書類の提出は義務であることから、提出を怠ると罰則が科されます。罰則内容は懲役1年以下、罰金100万円以下となっており、行政処分が科されることもあるので注意が必要です。
手続きが必要な理由
防火対象物工事等計画届出書の提出が義務付けられているのは、火災予防だけでなく、火災が発生してしまった際の被害を最小限に抑えるためでもあります。特に図面の提出はこの目的において不可欠であり、パーテーションの設置位置についても正確に届け出なければなりません。
また、消防法では、天井まで隙間のない仕切りを設置する場合にも、届け出を義務付けています。これは壁を設置することで火災発生時のリスクが高まることから、スプリンクラーの設置が必要となることもあるためです。
手続きを行う前にやっておくべきこと
パーテーションの設置に伴って必要となる手続きを行う際、事前に設置場所やパーテーションの種類などを正確に把握しておくことが大切です。これにより、スプリンクラーなどの消火設備を設置する場所などが明確になるため、それらの設備の整備も届け出前に済ませておくとよいでしょう。
また、一度届け出を行ってもパーテーションを増設したり移動させたりすると、再度届け出が必要になります。このことから、手続きを行う前には設置場所などを含めた間取りについてよく検討し、後になって変更が生じないようにすることも重要です。
手続きの方法
工事の目途が立って提出する書類の作成も完了したら、提出手続きを行います。これらの書類の提出先は最寄りの消防署となり、提出時には書類の確認などである程度の時間がかかることとなるので注意が必要です。このことから、提出時には時間的余裕を確保した上で手続きを行うとよいでしょう。
ちなみに、これらの書類の提出期限は工事の7日前までとなっています。工事を行った後に手続きを行わなければならないことに気づいても、提出期限が過ぎていたということにもなりかねないため、注意が必要です。
パーテーション設置の注意点
オフィスや事務所においてパーテーションを設置する場合、いくつかの点に注意しなければなりません。続いては、主に用途や防災の観点において特に注意すべき点をご紹介します。
まずは間取りをよく検討する
パーテーションは空間の間取りを変更する目的で設置されます。そのため、その間取りについては十分に検討しなければなりません。例えば、応接室を併設したオフィスとして利用する場合、導線を考慮しながらパーテーションの設置場所をよく考えることが大切です。
また、パーテーションを設置すると照明や空調設備の購入が新たに必要となることもあります。この場合、予算についてもよく考え、新規設備の購入が困難な場合には、そのことを踏まえた間取りを考えてみることが必要です。
各部屋に必要な設備
オフィスなどで部屋が複数ある場合、各部屋に火災報知機を設置しなければなりません。そのため、パーテーションの設置時には空間を仕切ることで生じる部屋の数についてもよく考えることが大切です。
また、オフィスなどでは排煙設備も設置しなければなりません。排煙設備の機能はパーテーションの設置場所によって弱まることもあり、そのことを考慮して設置場所や数を検討する必要もあります。
そのほか、パーテーションで仕切られた各部屋には空調や照明などの設備も必要となります。部屋数が多ければこれらの設備の購入費は当然かさむこととなるため、パーテーションの設置場所は予算を考慮しながら決めることも重要です。
賃貸の場合の注意点
賃貸を利用してオフィス・事務所を開設する場合、賃貸契約の取り決めについても確認しておく必要があります。物件によってはパーテーションの設置に際して管理会社やオーナーに許可を取らなければならないこともあり、契約時などに話をし、許可を得ておくことが大切です。
また、パーテーションを設置すると、退去時に原状回復費用が請求されるケースが少なくありません。多くの場合、賃貸契約書にはこのような退去時の費用発生にかかわる取り決めも記載されているので、パーテーション設置時にはその詳細も確認しておきましょう。
パーテーションの種類に関する注意点
単にパーテーションと一口にいってもその種類はいくつかあり、設置時には上手に使い分けるのが効果的です。例えば、天井から床までを完全に仕切れるタイプのパーテーションだけを使用すると、各部屋に空調設備が必要となるでしょう。
これに対して、上部だけが開閉できるパーテーションを設置すれば、複数の部屋をまたいだ空調設備の使用が可能となり、その稼働コストを抑えられます。同じように導線上に設置するパーテーションにはドア付きのもの、排煙機能を重視する場合には上部だけが仕切られないものを選ぶのも効果的です。
感染症対策としてもオフィス・事務所のパーテーション設置は欠かせない
新型コロナウイルスの流行は私たちの働き方にも大きな影響を与え、テレワークも広く行われるようになりました。このことからも、コロナ禍における新たなオフィス・事務所の設置時には、感染対策についてもよく考えることが大切です。パーテーションはこのようなオフィス・事務所の感染対策においても大いに活用できます。
コロナ禍におけるパーテーションの有用性
コロナ禍においては、飛沫感染の予防を目的としたソーシャルディスタンスの確保や個々の空間の隔離が重要視されるようになりました。特に多くの人が集まりやすいオフィスや事務所においてはこのような対策が広く行われており、その際にパーテーションが活用される事例も少なくありません。
これはパーテーションが容易に設置でき、なおかつ空間をしっかりと区切れるという特徴があるためです。このことから、オフィス・事務所におけるコロナ対策ではパーテーションを有効活用するのがおすすめです。
コロナ対策としてのパーテーションの活用方法
パーテーションには簡単に設置できるものも多く、例えばデスクなどが置かれた個々の社員のためのスペースをパーテーションで区切れば、高い飛沫感染予防効果が期待できます。
また、テレワークが推進されている企業などでは、日によって出社する社員の人数が異なるということもあるでしょう。この点においても、設置がしやすいというパーテーションの特徴は大きな強みとなり、その日の出社してくる社員数に応じてレイアウトを変えるといったことも可能です。
感染対策でパーテーションを設置する場合の注意点
感染対策としてオフィス・事務所にパーテーションを設置する場合、いくつかの点に注意しなければなりません。特に以下の2点に関しては、感染対策と業務の両立を円滑に行うという意味でも、必ず押さえておく必要があります。
換気効率の低下
パーテーションを設置することで多くの区切られたスペースができると、すべてのスペースで換気を行うのが難しくなってしまうこともあります。換気効率の低下は感染リスクを高める原因にもなってしまうため、パーテーション設置時には各々のスペースにおける換気方法についてもよく考えることが大切です。
パーテーションを設置することによる換気効率の低下を防ぐためには、天井までは届かないパーテーションを選び、各スペースを半個室の状態にすると効果的です。
社員同士でコミュニケーションをとる機会の減少
コロナ禍では会社内で社員同士がコミュニケーションをとる機会が減少し、業務に支障が出てしまうことも考えられます。また、各々がパーテーションで区切られたスペース内で業務を行うことにより、社員同士でコミュニケーションをとる機会は減少してしまいかねません。
このことから、パーテーションの設置に伴ってレイアウトを決める際には、社員同士が最低限の会話だけでも問題なく行えるよう、スペースの区切り方などをよく考えることも大切です。
今回のまとめ
新たにオフィス・事務所を設立する場合、内部の空間をパーテーションで区切るとコスト削減などのメリットが得られます。ただし、パーテーションを設置すると消防法での届け出義務が生じるため、必ず期日内に必要な書類を用意し、消防署へ届け出なければなりません。
また、パーテーションの設置に際してはレイアウトや必要な設備の設置場所などをよく検討し、賃貸の場合は退去時の費用についても考慮することが大切です。それに加え、コロナ禍においては感染対策を重視してレイアウトなどを決めていくことも忘れないようにしましょう。
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