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オフィス・事務所を賃貸するにあたって必要な消防関連の手続きとは
賃貸オフィスビルは、複数の会社・企業などが入居するので、多数の人が安全に業務に当たることができるための環境整備が必要です。ビルを経営する側が消防法に基いた手続きをする義務があるのはもちろん、賃貸オフィスを借りる側にも一定の手続きが求められます。今回は、オフィス・事務所の賃貸で必要となる消防関連の手続きについて紹介します。
【目次】
1.賃貸オフィス・事務所は貸す側も借りる側も手続きが必要
2.オフィスを貸す側に必要な消防関連の手続き
3.オフィスを借りる側に必要な消防関連の手続き
4.消防法に関わる必要手続きを怠るとどうなる?
5.オフィスに義務付けられている消防設備
6.Web会議ブースにも消防法は適用される
7.今回のまとめ
賃貸オフィス・事務所は貸す側も借りる側も手続きが必要
消防法にまつわる手続きについては、ビルのオーナーはもちろん、複数の企業が入居しているようなオフィスビルに入居する場合は、オフィスを借りる側も行う必要があります。賃貸オフィス・事務所に入居する側は、社員数などによって必要な手続きが異なりますが、どんな規模の会社であっても、必ず行うべき手続きもあるため注意が必要です。
オフィスを貸す側に必要な消防関連の手続き
複数の企業・会社が入居し、収容人数が50人以上のビルのオーナーは、「防火管理者」を選任して届け出なければなりません。防火管理者は、防火管理業務を監督できるような立場にあり、なおかつ防火管理のための必要技能・知識を備えている人だけが選任対象となります。
ただし、この技能や知識は、「防火管理講習」を修了することにより習得したものと見なされます。選任された防火管理者は、多くの方が業務に当たっているビルが万が一火災にあった際、被害を予防できるように「消防計画」を立てる義務があります。また、防火管理者には、収容する人員の数や階数によっては、「共同防火管理者」を立てる必要も生じます。
オフィスを借りる側に必要な消防関連の手続き
オフィスビルの1室を借りて営業を行う場合には、次の2つの重要な届け出があります。賃貸オフィス・事務所をお探し中の方は、入居時・移転時に必要となるので、ぜひ覚えておいてください。
手続きの前にまずは消防署へ連絡する
希望する条件の賃貸オフィスが見つかり入居することが正式に決まったら、まずは管轄の消防署へ連絡を取ることから始めます。自らの事業内容や用途を報告し、どのような消防設備を揃えるべきか明確にしておくことが必要不可欠です。ビルの規模や収容人数によって、必要となる設備は異なります。消防署と連絡を取って、次に紹介する届け出を含め、準備すべき物を確認しておくようにしましょう。
防火対象物使用開始届出書
不特定多数の人が使用する建物などを「防火対象物」と呼びますが、防火対象物の一部分を使用する場合にも、この防火対象物使用開始届出書の提出が必要です。消防署は「このオフィスにはこの事業者がこのような目的でこの事務所を使うんだな」と確認することができます。また、この届出を行うことにより、対象となるオフィスの消防設備などの現在の状況などを専門家がチェックします。
このチェックがあれば、入居前にビルや物件の安全性を確認することができるのです。防火対象物使用開始届出書の提出は、物件の使用を始める7日前までに行う必要があります。届出先は、管轄消防署です。
防火対象物工事等計画届出書
防火対象物使用開始届出書が、内装工事を伴わない入居であっても必ず必要であるのに対し、この「防火対象物工事等計画届出書」は、内装工事をする入居者にのみ提出義務があります。たとえ居抜き物件に入居・移転する場合でも、工事を行うのであれば、防火対象物工事等計画届出書の提出は必ず行わなければなりません。なお、この届出には、以下のような複数の必要書類を添付します。
□ 防火対象物概要表
□ 案内図
□ 平面図
□ 詳細図
□ 立面図
□ 断面図
□ 展開図
□ 室内仕上表及び建具表等
消防法に関わる必要手続きを怠るとどうなる?
オフィスビルや複合ビルなどに入居する際、消防法に関わる手続きを怠ると、行政処分を受けてしまう恐れがあるので、必ず提出するようにしましょう。もし手続きをしていなかったことが明るみになって自らが処分を受けたとしても、課された処分が済めばそれまでです。しかし、消防法に則した手続きを踏んでいない状態で火災が起きて実害があった場合、責任を取りきれないような事態になってしまうこともあり得ます。
処分を受けないためだけでなく、従業員や関係者の命を守りながら安全にオフィスを使用するために、決められた手続きを必ず行いましょう。
オフィスに義務付けられている消防設備
消防法では、オフィスにさまざまな消防設備の設置を義務づけています。それらの設備は法的な義務というだけでなく、いざという時に「あって良かった」と思うものばかりです。この機会に、オフィスや事務所には一体どんな消防設備が必要なのかおさらいしてみてください。
自動火災報知器
事業所の自動火災報知器は、業種ごとに定められたのべ床面積などに応じて設置義務が生じます。事務所の場合、のべ床面積が1000㎡以上であれば自動火災報知器を設置しなければなりません。ただし、11階以上に位置する事務所の場合には、のべ床面積に関係なく設置する義務があります。
消火器
消火器の設置義務は、事業形態や施設の種類のほか、のべ床面積などの条件によって、細かな規定があります。事務所については、のべ床面積が300㎡以上か、3階以上・地階・無窓階にある50㎡以上に限り消火器の設置義務が課せられています。無窓階というのは、地上部分において、消防法上で避難に利用できる開口部がないケースを指します。また、先述した条件外であっても、自分の力で避難することができない従業員などがいれば、消火器を設置しなければなりません。
スプリンクラー
スプリンクラーは、11階以上に位置する事務所・オフィスに設置義務があります。オフィスでは、OA機器や書類など、濡れては困るものが多数ありますが、地震などがあってスプリンクラーヘッドが壊れ誤作動を起こした場合などに、事務所中が濡れてしまうリスクがあります。
そのため、オフィスでスプリンクラーを設置する際には「予作動式」と呼ばれるものがおすすめです。予作動式は、スプリンクラーヘッドが壊れても、火災報知器が作動しない限り水が撒かれないタイプのスプリンクラーです。採用すれば、水によるダメージリスクを可能な限り抑えることができます。
非常用警報設備
非常用警報設備とは、非常ベル・自動式サイレン・非常用放送設備の総称です。50人以上収容する事務所、地階や無窓階で20名以上収容する事務所には、非常用警報設備が義務付けられています。また、11階以上や、地下3階以上に位置するオフィスにも設置しなければなりません。
ただし、最近では、大音量のサイレンが人々をパニックに陥らせ、冷静に判断する力を奪うこともある、という観点から、規模の大きな事業所など、警報機だけでは火災現場がわかりにくい施設では、音声による警報を設置するよう基準が作られています。
非常用照明器具
非常用照明器具は、熱源も形状もさまざまな物がありますが、設置義務があるのは他の消防機器と同じように、オフィスが入居している建物の規模や階数によって異なります。以下のオフィスビルには非常灯の設置が義務付けられています。
・3階以上あり、なおかつのべ床面積が500㎡以上のビル
・のベ床面積が1000㎡を超えるビル
・無窓の居室を含むビル
避難器具
ビルの3階以上にあるオフィスで、なおかつ収容人数が150人以上であれば、避難器具を必ず設置しなければなりません。また、同じ3階以上でも、無窓階であれば収容人数100人以上で設置義務が生じます。さらに、地階も収容人数が100人以上の事務所には避難器具の設置が必要です。
Web会議ブースにも消防法は適用される
コロナ禍で働き方の変更を余儀なくされ、リモートワーカーとの会議をオンラインで行うようになったという会社はたいへん多いのではないでしょうか?
周囲の迷惑にならないように、あるいは集中してオンライン会議を行うために、可動式のWeb会議ブース・フォンブースを導入した事務所も少なくないはずです。感染対策や業務の効率化アップに役立つ個人ブースではありますが、設置に際しては消防法が適用されるので注意が必要です。床面積が3㎡であるブースや天井・壁が不燃材料製であるブースなどは消防法の適用外ですが、消防法適用内のブースを導入した場合は、スプリンクラーや非常用の放送設備などの設置義務が生じます。詳しくは所管の消防署に問い合わせてみましょう。
今回のまとめ
賃貸事務所・オフィスに入居したり転居したりする時には、内装工事を伴わなくても提出すべき「防火対象物使用開始届出書」の提出を忘れないようにしましょう。また、内装工事を伴う場合にはそれに加えて「防火対象物工事等計画届出書」の提出が欠かせません。さらに、オフィスが入っているビルの規模や階数によっては、設置義務のある消防機器・器具が多数あります。従業員が安心して業務に励めるよう、また法に抵触しないよう、オフィスの賃貸契約が終わったら、まずは所管の消防署に報告と相談の連絡をしてください。
名古屋に本社を構えるオフィッコスは、オフィスや店舗などの賃貸仲介を専門に扱っている企業です。2012年の設立以来、多くのお客様からご利用いただき、ご希望に沿える物件をご案内できるよう、日々情報収集に努めています。常時50,000件以上の物件情報を有しており、ホームページに掲載していない情報も多数ございますので、オフィス・店舗の開設や移転を検討されている事業者様は、お気軽にお問い合わせください。