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2022.04.26

クリニックを開業する上で必要な手続きと初期投資の目安


クリニックを開業する際には、さまざまな書類の提出が必要になります。個人か法人かでも必要な書類の種類は異なるため、注意が必要です。クリニック開業には自己投資と資金の調達のバランスも大切です。クリニック開業の初期投資の目安はどのくらいになるのでしょうか。この記事では、クリニック開業に必要な手続きと初期費用の目安を詳しく紹介します。

【目次】
1.保健所に申請する書類
2.厚生局に申請する書類
3.税務署に申請する書類
4.保険関連で必要な手続き
5.クリニック開業の初期投資の目安
6.今回のまとめ

保健所に申請する書類

クリニックの開業は、内装工事前に保健所に相談に行くことが非常に大切です。通常は、内装を担当する設計会社が保健所に出向き、設計に問題がないかを確認します。クリニック開業前には保健所の立ち入り検査が入ります。保健所に事前相談を行っていない場合は検査で修正工事が必要になる場合もあるため、注意が必要です。
個人経営クリニックの場合は保健所に「診療所開設届」を提出します。この届け出の提出期限は開業から10日以内です。提出後に保健所の職員が、クリニックの設備や内装が基準を満たしているかを検査します。何も問題がなければ、検査から数日後には許可が下りるはずです。
また、法人の場合は、「診療所開設許可申請書」の提出が必要です。法人も開業から10日以内に申請してください。診療所開設届、診療所開設許可申請書の提出に必要な書類には下記のようなものがあります。

● クリニックの敷地の平面図
● 賃貸の場合は賃貸契約書
● 責任者の医師免許証の原本と写し
● 医師や看護師の履歴書や免許証
● クリニック周辺の案内図
● その他の申請書類

これらの書類に関しては、クリニックを開業する自治体の保健所に再度確認してください。クリニックの開業にあたり、保健所にはその他にも「診療用エックス線装置備付届」や「麻薬施用者免許申請書」・「各種医療機関指定申請書」などの提出が必要になることもあります。

厚生局に申請する書類

クリニックとして営業するには、保険医療機関として指定を受ける必要があります。健康保険証を使えるクリニックとして開業するために、厚生局で「指定医療機関コード」を取得する申請を行います。この申請は、すでに保健所での手続きが終わった段階で行います。。指定医療機関コードの申請には開設届の副本が必要だからです。
指定医療機関コードの取得の申請は、クリニックを開業する地域の地方厚生局で行います。厚生局により書類の提出期限が異なるため、この書類に関しても事前に確認しておくことをおすすめします。指定医療機関コード取得の申請に必要な書類は、開設届の副本・クリニック周辺の案内図・クリニックの平面図・医師免許の原本と写し・医師の履歴書など、保健所での手続きとほぼ同じです。必要書類が揃ったら一度厚生局に確認してください。足りない書類があればその時点で教えてくれるはずです。
申請書が受理されると医療機関コード番号入りの保険医療機関通知書が後日送られてきます。電子カルテにはこのコード番号の登録が必要です。指定医療機関コードの申請が遅れて、開業に間に合わないと自由診療扱いになります。自由診療所として開業した場合は、医療費は患者さんの全額負担になってしまいます。そのため、開業までに手続きが完了しない場合は、指定医療機関コード取得まで開業を待つことが一般的です。開業を遅らせると費用面でも負担になるため、開業の1ヵ月前など申請の時間に余裕をみて、厚生局に相談してください。

税務署に申請する書類

税務署に申請する書類にはいくつかありますが、書類の手続きは個人か法人かによっても異なります。その中で両方に共通する書類には、「青色申請承認申請書」と「棚卸資産の評価方法の届け出」があります。
青色申請は確定申告の2種類のうちの1つで、もう1つの白色申請よりも税金の支払いを抑えることができます。複式簿記に毎日の経費を記入して提出する必要がありますが、税金を抑えたいなら必要です。棚卸資産の評価方法の届け出とは、会社の活動における資産のことで、将来のために保管している商品や必要な原材料などの在庫のことです。決算期に在庫を1つ1つ数えて棚卸資産の金額を確定します。
棚卸資産の評価方法の届け出は、必ず行わないといけない手続きではありません。しかし、この書類を提出すると、原価法や低下法などから評価方法を選べるため、評価方法を選びたい事業者はぜひ申請してください。この届け出は、クリニックを設立する地域の税務署に提出します。法人でクリニックを新設した場合の提出期限は設立後初めての確定申告書の提出期限と同じですので、その点は気を付けてください。では、ここからは個人と法人に分けて税務署に申請する必要書類を見ていきましょう。

個人経営の場合

上記以外で個人経営の場合に必要な書類は「個人事業開廃業等届出書」・「納期限の特例に関する届出書」です。個人事業開廃業等届出書は、クリニックだけでなく個人で事業を開設する際に必要な提出書類で、クリニック開業から1ヶ月以内に管轄の税務署に届け出てください。
納期限の特例に関する届出書は、従業員が10人未満のクリニックが対象で、個人事業者が従業員を雇用する際に従業員の所得税を源泉徴収して納める義務がありますが、その手続きを楽にするための届け出と考えていいでしょう。この届出を出さないと従業員の給与支払いの翌月10日までに納税しないとならず、手間がかかります。この書類を提出することで年に2回までの納税に減らせるため、かなり手間が省けます。

法人経営の場合

クリニックを法人で経営する場合に、税務署に提出が必要になる書類は「給与支払い事務所等の開設届出書」・「法人設立届出書」の2点です。給与支払い事務所等の開設届出書はクリニック開業から1ヶ月以内に提出してください。これは従業員に給与を支払うために必要な提出書類です。
法人設立届出書は、クリニックだけでなく法人を設立する際に必要な届け出のことで、法人を設立してから2ヵ月以内に税務署に提出します。この届け出に必要な書類には登記簿謄本や定款の写しなどがあります。

保険関連で必要な手続き

クリニックを開業したら、「雇用保険」・「社会保険・厚生年金保険」・「労働保険」の加入手続きが必要になります。それぞれの保険について見ていきましょう。

社会保険・厚生年金保険

社会保険は法人経営の場合や、従業員が5名以上になると加入の義務があり、個人運営のクリニックや従業員が5名以下の場合は加入の義務はありません。クリニックによっては社会保険でなく、福利厚生で求職者にアピールすることもよくあります。

労働保険

労働保険は、個人・法人に関係なく従業員を雇用する場合は加入義務があり、従業員の雇用形態に関係なく手続きが必要です。しかし、クリニック開業主の妻や息子など、家族を雇用する場合には必要ありません。この届け出の提出先は、クリニックを開業する地域の労働基準監督署です。
クリニックを開業する医師は、医師国保に加入すれば自らの従業員や家族にもこの保険を適用できます。医師国保は、収入に関わらず保険料が一定なのがメリットです。法人経営のクリニックは加入ができず、自家診療分の保険料の請求ができない点はデメリットになります。

雇用保険

雇用保険は、雇用期間が31日以上で週に20時間以上労働する従業員を雇う時に加入が必要です。雇用保険の手続きはハローワークでできます。この届出の正式な名称は「雇用保険被保険者資格取得書」です。
また、同時に「雇用保険適用事業所設置届」の提出も必要です。この書類の申請はその他の保険関係の手続きが終了していないと行えませんので、その点は注意してください。

クリニック開業の初期投資の目安

クリニックの開業には最低5,000万円が目安で、医療機関によっては1億円以上かかると言われています。飲食店の開業に必要な初期費用の目安が1,000万円ですので、それと比べてもかなり大きな数字です。クリニック開業に莫大な費用がかかる理由は、医療機器や内装工事にかかる費用が高いからです。クリニック開業の初期費用の目安を、項目ごとに見ていきましょう。

● 内装工事 約2,000~6,000万円
● 医療機器 約1,000~1億円
● 運転資金 約3,000~4,000万円
● 什器備品 約200~400万円
● 賃貸に必要な費用 約400万円
● 広告費 約300万円
● 消耗品 約200万円
● 医師会入会金 約200万円

上記の項目からもわかるようにクリニック開業の初期費用の大部分を内装工事や医療機器が占めています。医療機器にかかる費用は医療機関によって大幅に異なります。最も費用がかからないのは小児科の約1,000万円で、最も費用が高いのは脳神経外科の1億円です。
医師会入会金についてですが、各医師会で費用に差はあるものの通常は100~500万円の間と言われています。クリニック開業の初期費用は費用に高いです。そのため、全てを自己出費することは非常に困難に思えますが、自己出費でクリニック開業の初期費用を大きくカバーしている人も多くいます。実際にクリニックを開業した人を対象にした調査によると、自己出費で最も多かった金額は、5,000~7,000万円です。2番目に多かった数字は2,000~3,000万円です。自己出費をすれば、資金調達の負担を減らすことができます。
自己出費で初期費用をカバーできなければ、資金を調達しないとなりません。銀行から資金を調達する際は、できるだけ少額を借りようと借入金額をできるだけ低く抑える医師は多いです。しかし、そのせいで必要な医療機器を購入できず、運転資金さえぎりぎりになってしまうこともあります。銀行からの借入は事業の運営や拡大が目的です。借り入れはそのための必要な投資ですので、十分な額を借りた方がいいと考える専門家は多いです。

今回のまとめ

クリニック開業に必要な手続きや初期費用の目安について紹介しました。クリニック開業には書類上の手続きが非常に多いです。クリニック開業は、資金調達が大きな鍵となるので、自己投資額や借入を計画的に準備することをおすすめします。
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