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2022.04.07

賃貸オフィス・事務所の賃料が増減するケースとは?


賃貸オフィス・事務所でも、賃料の増減がなされる場合があります。多くの場合で賃貸借契約の内容には賃料の増減を可能とする特約が組み込まれており、貸主と借主どちらかが要求し双方の合意が得られることで賃料の増減が可能となるのです。となれば、いざという時に頭を抱えてしまわないためにも、具体的にどんな場合に賃料増減の請求が行われるのかが気になるところでしょう。
そこで、今回は賃貸オフィス・事務所における賃料増減の主なケースについてご紹介いたします。ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
1.そもそも賃貸オフィス・事務所の賃料の増減は可能?
2.賃貸オフィス・事務所の賃料の増減の流れと手続き
3.賃貸オフィス・事務所の賃料増減のケース
4.賃貸オフィス・事務所における賃料増減への対応
5.調停や訴訟に発展した際に賃料の増減はいつ適用されるのか
6.今回のまとめ

そもそも賃貸オフィス・事務所の賃料の増減は可能?

冒頭で述べた通り、賃貸オフィスでも賃料の増減を行うことが可能です。基本的には、貸主と借主双方の合意をもって増減がなされ、それに際してはどちらか一方による増額請求または減額請求の手続きが必要になります。もちろん、この場合でも双方の合意が前提となるため、どちらも納得のできる正当な理由がなければいけません。
なお、増減額請求は、賃貸借契約の内容に賃料の増減が可能であるという記載がある場合のみ行えます。多くの場合で増減額請求を可能としていますが、仮に契約内容に賃料の増減ができない趣旨の記載がある場合には、増減の申し出を行うことはできません。ただ、賃貸借契約にまつわる借地借家法の32条には、特定の事情がある場合においては契約内容に関わらず賃料の増減額請求ができるという強行規定があり、この権利を利用して一方的に調停・訴訟を起こすことができます。
ただし、特定の契約形式で特約が設けられている場合はこの限りではありません。また、調停・訴訟を起こす際には、より正当性のある理由が求められます。

賃貸オフィス・事務所の賃料の増減の流れと手続き

賃料の増減を行うには、然るべき手順と方法を経る必要があります。以下では、賃貸オフィスにおける、賃料の増減の流れと手続きについてご紹介します。

書面の送付・交渉

賃料の増減は、貸主か借主どちらかによる増額請求・減額請求の通知書の送付から始まります。通知書の雛形はネットなどから入手し、法的効力を持たせるために配達証明付内容証明郵便で送るのが基本です。そして、これが意思表示となり、次に両者で増減の検討および交渉を行う形になります。
なお、急に書面を送ることに抵抗がある際には、予め増減をお願いする旨を伝えておくと良いでしょう。良好な関係が築けている場合ならば、そちらのほうがスムーズに交渉できるということもあります。また、交渉においては、のちの関係を崩さないためにも、相手の立場を配慮した上で誠実な姿勢で臨むことが大切です。

調停

交渉にて双方の同意がなされなかった場合には、増減を望む側が調停を申し立てることになります。ここで訴訟ではなく調停となる理由は、賃料の増減額請求では調停前置主義がとられているためです。なお、調停は裁判官や調停委員の第三者が介入して行う協議のことで、客観的かつ実証的なデータをもとに執り行われます。そのため、当事者同士の簡単な交渉よりも合理的な話し合いを行うことが可能です。ちなみに、賃料の増減の場合は民事調停となり、簡易裁判所に申し立てる形になります。
その際には、申立書とともに手数料と添付書類の提出が必要です。ほかにも、弁護士に依頼する場合には、その費用も準備しておかなければいけません。

訴訟

調停で双方の同意がなされればその時点で協議は終了となりますが、同意が得られなかった場合には訴訟・裁判に移行します。裁判では裁判官同席のもと、双方の主張と立証を行います。最終的には、不動産鑑定士による鑑定結果を参考にして判決が下されます。
鑑定には多額の費用がかかり、その負担は原則的に訴訟を提起した側が負う形になります。訴訟までいけばやはり負担する費用が大きくなるため、この点には注意が必要です。結局、予期しない形で出費が嵩むといったことにもなりかねないので、可能な限り早い段階で同意を得ることが重要になります。

賃貸オフィス・事務所の賃料増減のケース

賃貸オフィスの賃料の増減を可能とする事由は、借地借家法によって決められています。逆にいえば、貸主側でも借主側でも、特定の事由がない限り賃料の増減は認められていません。ここでは、賃料増減の具体的なケースについて見ていきましょう。

賃料の増額ができるケース

貸主側の賃料増額の要望が認められるケースとしては、主に下記の事由がある場合になります。
・土地や建物の固定資産税またはその他の負担の増加。
・土地や建物の価格の上昇またはその他の経済事情の悪化。
・周囲の賃貸オフィスの相場の上昇。
賃料の増額は経済的事情を踏まえた上で検討されるもので、単に家賃収入を多くしたいといった理由ではまず認められません。借主の生活態度に不満があるなどの事情も同様です。

賃料の減額ができるケース

借主側の賃料減額が考慮されるケースは、下記のように貸主側とほぼ逆の事情の場合になります。
・土地や建物の固定資産税またはその他の負担の減少。
・土地や建物の価格の減少またはその他借主側の経済事情の悪化。
・周囲の賃貸オフィスの相場の減少。
借主側の賃料減額請求においては、上記のほかにも物件の築年数・管理状態・立地条件・空室率なども理由とすることが可能です。ただ、いずれの場合も、正当な理由があるからといって、必ずしも請求が通るわけではありません。

賃貸オフィス・事務所における賃料増減への対応

賃料の増減が行われる主なケースは把握していただけたと思います。では、いざ増減の請求がされた際に、どのような対応をとれば良いのでしょうか?やはり、賃料の増減で築いてきた良好な関係を崩したくないという方も多いはずです。そこで、ここではそういった場合の適切な対応について解説いたします。

貸主側の対応

借主に賃料の減額を申し出された際には、当然ながら貸主は承諾か拒否いずれかの対応をとることになります。相談の段階で承諾すれば調停や訴訟を行う手間が省ける一方で、拒否すればそれらを経て決定しなければいけません。また、拒否した場合には、借主との関係を悪化させるほか、移転のきっかけにさせてしまう可能性があります。この点から、穏便に済ませたいと考えるならば、早い段階で承諾してしまうほうが良いでしょう。
ただし、承諾にあたっては、借主の状況とともに自身の状況もよく考えることが大切です。賃料を減額することで、自身の経済事情が危うくなってしまうようでは意味がありません。それを踏まえて、どうしても承諾できないという場合であれば、調停に持ち込み第三者の考えを取り入れるのも一つの手段です。
そのほかの対応としては、予め減額請求を見越した賃料に設定したり、定期借家契約を結んだりすることが挙げられます。なお、借地借家法では、定期借家契約でのみ賃料の減額請求権の排除が可能であるとしています。

借主側の対応

貸主側と同様に、借主側が賃料の増額を求められた際にとる行動は承諾か拒否のいずれかです。貸主側に増額請求を行う正当な理由がなければ必ずしも応じる必要はありませんが、正当な理由が存在する場合には協議に必ず応じなければいけません。正当な理由があるケースでは仮に協議に応じなくても、調停・裁判に移行すればどのみち増額の可能性が高くなります。
また、最後まで増額を不服とし家賃を払わないということになれば、それを理由に立ち退きを迫られる結果にもなります。借主の家賃の滞納は、貸主が立ち退きを求める正当事由にあたるため注意が必要です。不要なトラブルに発展させないためにも、増額を申し出された際にも相手と自身の状況をよく見定めることが重要であると言えます。

調停や訴訟に発展した際に賃料の増減はいつ適用されるのか

双方の同意が得られないまま調停や訴訟に発展すれば、当然それらが終結するまで賃料の増減は適用されません。しかし、調停や訴訟が長期化することも往々にして起こり得ます。そういった場合は、賃料の増減はいつ行われるのでしょうか?
結論からいえば、調停や訴訟が長期化した際にも増減が適用されるのは合意・判決がなされてからになります。そのため、どれだけ長期化しようと、その期間分の賃料は増減額請求時点で相当とした金額を支払い続ける必要があるのです。ただ、調停や訴訟によって賃料の増減が認められ、新たな適正賃料が確定した場合には状況が変わります。具体的には、調停・訴訟の期間中に支払われた賃料も増減の対象となり、新たな適正賃料と請求時点の金額との差額を貸主か借主のどちらかが支払わなければいけないのです。
仮に、貸主による増額請求が認められた場合には調停・訴訟中の賃料に増額分が上乗せされ、借主による減額請求が認められた場合には調停・訴訟中の賃料から減額分が差し引かれる形になります。したがって、前者ならば借主が増額分を支払い、後者ならば貸主が借主に対して過払い分を支払わなければいけません。なお、それらの精算額には年1割の利息が付与されます。

今回のまとめ

賃貸オフィス・事務所の賃料の増減は、大まかには貸主もしくは借主の経済的な事情がきっかけになります。個人の経済事情を把握するのは難しいですが、地域の賃料の相場などはネットでも確認することができます。いざ増減額請求をされた際に落ち着いて誠実な対応ができるよう、予め心の準備をしっかりと整えておきましょう。
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