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賃貸オフィス・事務所における「事故物件」の定義とは?
「事故物件」と聞くと、やはり良い印象を抱く人はいないでしょう。居住用のみならず、オフィス・事務所用の物件でも同様のことが言えると思います。むしろ、賃貸オフィスとなれば、事故物件と判明した場合には事業に支障をきたすことも考えられます。そもそも、賃貸オフィスの事故物件の定義は、居住用の物件と同じものなのでしょうか?今回は、賃貸オフィスにおける事故物件の定義に着目してご紹介します。
【目次】
1.事故物件とはどんな物件のことなのか
2.賃貸オフィス・事務所の「事故物件」の定義
3.事故物件は事前に教えてもらえるのか
4.事故物件の告知の対象と期間
5.事故物件に入居する際の注意点
6.事故物件はどうやって見つける?
7.今回のまとめ
事故物件とはどんな物件のことなのか
そもそも、事故物件とはどういった物件を指すのでしょうか?実のところ、事故物件には明確な定義は存在しません。しかし、一般的に事故物件として扱う条件はあります。ここでは、一般的に事故物件とされる条件についてご紹介します。
心理的瑕疵がある物件
瑕疵(かし)は不動産業界で用いられる用語であり、物件の欠陥を表す言葉です。そして、心理的瑕疵とは、入居予定者の心理的な問題により入居を拒絶されるような瑕疵が物件に生じることを指します。心理的瑕疵の具体的な事象には、主に物件内での死亡事故が挙げられます。
なお、死亡事故にも事件性のあるものとそうでないものがありますが、ここで言う死亡事故とは自然死や、日常生活における不慮の事故を除くほとんどのものが該当します。しかしながら、事故物件に関する正式なガイドラインが公開されたのが近年であることから、貸主や借主の考え方により未だ定義が曖昧な部分もあるようです。
ほかの瑕疵がある物件
瑕疵には心理的瑕疵の他にも、物理的瑕疵・環境的瑕疵・法的瑕疵といった種類があります。事故物件を「住みたくないと感じる物件」という広義の意味で捉えると、これらの瑕疵も含まれることがあるようです。なお、物理的瑕疵はシロアリ被害や雨漏りなどの建物自体に見られる欠陥を指し、環境的瑕疵は付近に反社会勢力の拠点や墓地などがあるといった周辺環境の欠陥、法的瑕疵は建物の設計が現状の法律に則していないといった建築における欠陥を指しています。
賃貸オフィス・事務所の「事故物件」の定義
賃貸オフィス・事務所に関しても、前項で挙げた条件に当てはまる物件が概ね事故物件であると言えます。ただ、賃貸オフィスの場合には、事故物件の対象になりにくい特性があります。というのも、現在、国土交通省によって定められた事故物件に関わるガイドラインが公表されていますが、それに該当するのは居住用の物件のみとなっているのです。ガイドラインには特定の死亡事故の告知とその期間、告知義務が発生する建物の使用部分について記載されていますが、その全てにおいて事業用物件は対象外となります。
つまり、事故物件と定義する上では、あくまで日常生活を送るための用途における心理的瑕疵の有無がより重要視されているのです。実際に、2021年10月に発行された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」には、不動産の範囲として継続的に生活を行う場である居住用不動産のみを対象とすることが明記されております。
また、賃貸オフィスにおいて、借主があとになって事故物件であったことを知り訴訟を起こした判例では、多くの場合で借主の主張が棄却される形になっているのです。特に、直前に入居者が入っていた際は認められていません。この点から、告知義務を負う賃貸オフィスの宅地建物取引業者の間では、期間を問わず事故後すぐに入居者が入った場合、そのあとの入居者には告知を行わないといった暗黙のルールもあるようです。ちなみに、住宅兼事務所となるSOHOマンションなどに関しては居住を行う目的もあるため、上記のガイドラインが適用されることが考えられます。
事故物件は事前に教えてもらえるのか
前述の通り、特定の死亡事故が発生した場合には、物件の宅地建物取引業者に借主への告知義務が発生します。なお、ガイドラインの制定以前にも、もともと賃貸物件には心理的瑕疵の告知義務がありました。告知を怠り、のちに事故を知った借主とのトラブルとなれば、貸主は契約解除や損害賠償請求などを余儀なくされてしまうためです。
もちろん、心理的瑕疵の告知義務は賃貸オフィスにも存在します。ただ、オフィスに関してはガイドラインが制定されておらず、心理的瑕疵もさほど重要視されていないため、告知の方法は個々の宅地建物取引業者に一任される形となっているのです。そして、前項に挙げたように賃貸オフィスにおける事故物件には、「自身の前に別の入居者がいた場合、告知を行わなくて良い」といった独自のルールもあります。また、そもそも居住用に比べて事故物件となることが少ないことも指摘できます。とはいえ、情報を隠すことは業者側にも特段大きなメリットはないため、どうしても気になる場合は入念に聞いてみるようにするのが良いかもしれません。
事故物件の告知の対象と期間
居住用の物件のみ該当となりますが、最新のガイドラインでは以下のように事故物件の告知義務が定められております。
告知義務が発生する死亡事故
告知義務が発生する死亡事故は、自然死や生活間での不慮の事故を除くものです。例えば、自然死ならば病死や老衰を指し、不慮の事故は誤嚥や階段からの転落などが当てはまります。ただし、死亡してから長期間放置され、特殊清掃やリフォームが行われた場合は告知を行わなければいけません。なお、必ず告知を行うことになる事案は自殺や殺人、そして事件性・周知性・社会的影響が高いものとなります。
告知の対象となる事故の発生場所
告知の対象となる事故の発生場所は、日常生活で通常利用する場所全てが該当します。つまり、日常生活を送る室内はもちろん、集合住宅の共用部分で起きた事故も告知の対象となるのです。なお、具体的な共用部分としては、エントランス・廊下・エレベーター・階段などが挙げられます。ただし、事故が発生した部屋とは別の部屋を借りる人や、使用頻度の低い共用部分で発生した事故に関しては告知の必要はないとされています。
告知義務が伴う期間
告知を行わなければならない期間は、事故発生から概ね3年間と定められています。ただ、特に重要視されている点は事件性・周知性・社会的影響であり、これらが大きい事案に関しては期間を過ぎたあとにも告知の必要があるとされています。
また、入居予定者からの指摘があったり、入居予定者が把握するべき事情があった場合も同様です。
告知で伝える内容
告知では、死因や場所といった事故の詳細をはじめ、発生時期などを明確に伝える必要があります。また、特殊清掃が行われた場合でも、それを行った旨や事故が発覚した時期を伝えなければいけません。ただし、告知をする際には亡くなった人やその遺族に対する十分な配慮も必要とされ、氏名・年齢・住所・家族構成などの情報は伝えなくて良いとしています。
事故物件に入居する際の注意点
居住用であれ事業用であれ、事故物件に入居する際に注意すべき点はやはり、周知されているかどうかです。周囲に人が死亡した現場であることが知れ渡っていれば、不穏な噂が囁かれてしまい落ち着けない生活環境となってしまいます。また、オフィスなど事業に利用する空間であれば、化学的な根拠もない噂が広がり客足が遠のいてしまう懸念もあります。
事故物件に入居するにあたっては、世間では事故が起きたという事実を気にする人がいることや、それにより事業などに支障をきたす可能性があるといったデメリットを把握しておくことが重要です。
事故物件はどうやって見つける?
様々な観点から、どうしても事故物件は選びたくないという方もいると思います。では、そういった場合には、どうやって事前に事故物件を見つければ良いのでしょうか?ここでは、事故物件の見つけ方についてご紹介します。
不自然なリフォームがされているかどうかを見る
凄惨な事件や死後時間が経ってから発見された場合、その痕跡を清掃だけで取り除くことは困難になります。そのため、こういった場合には該当箇所のリフォームがされることが多くなるのです。仮に、床や壁など一部分だけ不自然に新しくなっている場合には、しっかりとその理由を聞いてみることをおすすめします。
ネットで調べる
事故物件であるかどうかは、ネットでも簡単に調べることができます。例えば、気になる物件に関して過去の事件の有無について調べれば、すぐに情報が得られるでしょう。また、事故物件とその詳細をまとめた有名なサイトも存在します。それを利用することで、気になる物件の情報だけでなく、その周囲でどのような事故があったのかという点も調べることができます。
今回のまとめ
近年、居住用の事故物件の定義については明確になりつつありますが、賃貸オフィス・事務所の事故物件はまだまだ曖昧な部分もあります。とはいえ、賃貸オフィス・事務所の宅地建物取引業者にも告知義務があり、事故物件かどうかを知りたい場合には直接聞いたり事前に調べたりすることで把握することができます。根も葉もない噂でも、事業においては不利になる可能性もあるので、この点にはしっかり注意しましょう。
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