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賃貸オフィス・事務所の貸主の法的義務とは?
貸主と借主がお互いに納得した上で賃貸借契約を結びますが、思わぬことでトラブルに発展することがあります。貸主の法的な義務に関する知識を持っていると、トラブルを避けたり不利な立場に追い込まれたりせずに済むでしょう。賃貸オフィスを借りるなら知っておきたい、貸主の法的義務について理解を深めましょう。
【目次】
1.貸主の法律的な立場とは
2.賃貸借契約書とは
3.物件を借主に使用収益させる義務
4.物件の修繕義務
5.借主が修繕費用を負担した際に費用を返す義務
6.貸主が義務を怠るとどうなるのか
7.今回のまとめ
貸主の法律的な立場とは
貸主の法的な義務を知る前に、貸主がどのような立場にあるのかをしっかりと理解しておきましょう。賃料を受け取ることで賃貸物件を貸し出す側の人を「貸主」といい、「賃貸人」「大家」も同じ意味を持ちます。
借主は文字通り、物件を借りる側の人のことです。賃貸借契約書を取り交わすことで、貸主の法的義務が発生します。貸主には賃料を払ってもらう権利がある代わりに、法的に守らなければならないことも発生するのだと覚えておきましょう。貸主の法的義務を知らないまま契約してしまうと、本来であれば必要のない修繕費を請求されるリスクを負うことになってしまうかもしれません。
賃貸借契約書とは
賃貸オフィスや住居を借りる際に、必ず賃貸借契約書を取り交わします。何のために必要なのかというと、賃貸借契約に関する争いを防ぎ貸主の経営をスムーズに進めるためです。借主にとっても、安定して居住やオフィスとしての使用ができるなどのメリットがあります。賃貸借契約書は物件を借りるために必ず必要になるもので、物件の住所や付属品などが記載されているほかにも、借主と貸主がお互いに認識を同じにしておかなければならないことが記載されていることがポイントです。
自分が借りようとしている賃貸オフィスと契約書の内容が、一致しているかを確認した上で契約を取り交わさなければなりません。賃料・共益費・敷金・付属施設使用料などの、お金に関わる項目や契約期間なども、しっかりと確認しておきましょう。
宅地建物取引士の資格を持った不動産仲介業者や大家が重要事項説明書の内容を借主に説明し、借主が納得したら賃貸借契約書に進むという流れです。契約の直前に重要事項説明書の説明が行われることが多く、重要事項説明書と賃貸借契約書を混同してしまうことが少なくありませんが、契約の上で効力を持っているのは賃貸借契約書であることを押さえておきましょう。
物件を借主に使用収益させる義務
貸主の法律的な立場や賃貸借契約書について理解できたところで、いよいよ貸主の法的な義務について見ていきましょう。賃貸借契約書を結んだら、貸主には借主に物件を使用収益させる義務があると、賃貸借に関する「民法第601条」に定められています。これは室内だけでなく、ベランダや廊下などの共用部も対象です。
使用収益とは、借主が物件を使用して利益や利便性を得られるようにするという意味になります。この義務があることで、「賃料を支払っているのに物件を使用させてもらえない」というリスクがなくなるのです。賃貸借契約は貸主と借主の両方が合意することで契約が成立する形式となっており、契約成立後に物件を引き渡すことになりますが、借主は物件を引き渡してもらえなければオフィスとして使用できません。
引き渡しの前から賃料が発生することはなく、貸主が借主に物件を引き渡し利用する「対価」として賃料を支払うということを民法ではっきりと定めています。借主側が、契約期間が終了したときに「引き渡しを受けた物」を返還することを約束した上で、賃貸借の効力が発揮されることになるのです。借りたものを返すという約束ができていることが、前提であることも押さえておきましょう。
物件の修繕義務
貸主は借主に使用収益させる義務を負っていると同時に、物件を使用できる状態にしておかなければならないという義務も負っていると「民法第606条」で定められています。
例えば、空調設備が使えなかったり窓が割れていたりすれば、オフィスとしての使用は難しいでしょう。修繕義務の範囲は多岐にわたりますが、基本的には基礎や柱など建物の躯体部分や、賃貸借契約書で取り交わされた設備全般に対して修繕する義務を負うことになるのです。
ただし、借主が「故意」に建物の躯体や設備を破壊した場合には、借主に修繕義務が発生します。よく問題になる部分として、電球やカーテンといった「消耗品」に関しては貸主に修繕の義務はありません。修繕義務の範囲に関してはさまざまな捉え方があるため、賃貸借契約書を交わす際によく確認しておきましょう。修繕に関するトラブルは多く、契約段階で「どの範囲までをどちらが修繕するのか」に関して明らかにしておくことが必要です。
賃貸オフィスとして貸し出すのであれば、問題なく利用できる範囲で修繕がされていなければなりません。壁が壊れていたり床が崩れたりしている状態では、安全に使用できないでしょう。
建物の老朽化などで建物の管理や使用に問題が生じた場合は、貸主が修繕する義務を負います。借主が入居していたとしても、「建物の保存に必要となる修繕」を拒むことはできません。借主が修繕を拒んでオフィス内に立ち入らせないなどの行為をした場合、修繕できないことで建物の価値が下がり貸主に対して大きな損害となる恐れがあります。借主には保存行為受忍義務があるので、修繕を拒めば保存行為受忍義務違反をすることになるでしょう。
借主が修繕費用を負担した際に費用を返す義務
借主が必要に迫られて、借りている物件の躯体や設備などを修繕しなければならなかったケースでは貸主に修繕費を請求できる場合があります。貸主は、本来自らが修繕しなければならなかった部分を、借主に負担してもらった場合は修繕にかかった費用を返還する義務があるのです。建物を緊急的に修繕する必要がある際は、借主が貸主の所有物である物件を修繕することが、民法第607条で認められています。
どんな場合があてはまるのかというと、雨風などの突発的な事故で窓が割れたり、扉が壊れてしまったりといったケースがあげられます。貸主が早急に修繕が必要であると認めているにもかかわらず、長期間修繕の手配を行わないこともあるでしょう。このように、貸主が修繕すべきと決められている範囲だったとしても、業務に支障をきたしてしまう場合は借主が速やかに修理を依頼しなければならないケースがあるのです。
また、修繕が必要な部分に発生する費用だけでなく、建物の価値を上げるような「設備の改良」にかかった費用も貸主に請求できる場合があります。
例えば、普通の窓を防犯効果が高い窓に交換した場合は建物の価値が上がることになるので、費用の請求が認められる可能性があるのです。ただし、契約内容によってどこまで修繕してよいかは異なりますし、改良に着手する前に通知が必要とされているケースもあります。修繕費の返還に関しては賃貸借契約書の「特約事項」で定められていることが多いので、内容をよく確認することが大事です。
貸主が義務を怠るとどうなるのか
もし、貸主が法的義務を守らなかったらどうなるのか、疑問に思う人もいるかもしれません。
例えば、本来は貸主が修繕を負担する部分を直さずに放置した場合、本来は問題なく使用できるはずだった部分が使えないわけですから、借主は賃料の減額を請求できると民法第611条で定められています。使えなくなった割合が大きければ大きいほど、減額される率も高くなることがポイントです。
貸主が法的義務を守らなかった場合には、貸主が「債務不履行責任」を追うことになります。本来、オフィスや事務所として使えるはずだったものが使えないとなれば借主は不利益を被ることになるので、場合によっては業務を遂行できなかったことで発生した「損害賠償」を請求することになるでしょう。貸主にとって、義務を怠っても良いことは何もないということになります。
今回のまとめ
賃貸オフィスや事務所の貸主には多くの法的な義務が課されており、義務を怠った場合には債務不履行責任を負うことになるでしょう。そのため、借主から修繕の依頼や設備の故障に関する連絡を受けた場合は、速やかに対処することが必要となります。修繕の範囲は賃貸借契約のトラブルとして多い事例の一つでもあり、賃貸借契約書で決められた内容によって変わってくる部分です。契約前に内容をよく確認し、不明点や問題は明らかにしておきましょう。契約後も疑問点がある場合は、速やかに仲介業者や貸主に確認を取るようにすることでスムーズに解決できます。勝手に設備の改良などを行うと後々問題になったり、費用を負担してもらえないなどの原因になるので、連絡や相談を怠らないことが大事です。
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