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賃貸オフィス・事務所の貸主が負う必要のない責任とは?
オフィスや事務所の貸主は、セットになった高額の火災保険に加入したり警備員を雇ったりして所有する建物を守らなければなりません。オフィスや事務所を賃貸すると、借主との間に何らかのトラブルが起きやすいです。そのため、貸主は借主とのトラブルや理解の違いを避けるためにも、貸主・借主のそれぞれの義務や責任について把握しておく必要があります。
貸主には修繕義務といったように、建物を借主の収益が可能な状態に保持する責任があります。しかし、場合によっては貸主に修繕義務は問われない場合もあります。この記事では、賃貸オフィスや事務所の貸主の責任が問われないケースの例をいくつかを紹介します。オフィスや事務所を賃貸している方はぜひ参考にしてください。
【目次】
1.賃貸オフィスで借主が怪我をした場合
2.自然災害で建物が崩壊した場合
3.オフィスビルの設備工事中にテナントが営業できない場合
4.賃貸オフィスで借主が盗難被害に遭った場合
5.貸主の修繕義務が発生しないケース
6.今回のまとめ
賃貸オフィスで借主が怪我をした場合
賃貸しているオフィスや事務所は、規模によっては非常に多くの人が毎日行き交うことになります。人の出入りが多ければ、建物内で何らかの事故が起こる確率も高くなります。賃貸しているオフィスや事務所の借主が建物内で怪我をしてしまった。このような場合は、貸主の責任になるのでしょうか。
借主Aが他のテナントの借主Bにあやまって怪我をさせてしまった場合は、責任は貸主ではなく借主Aにあります。借主Aはそのような事故に備えて、損害保険の一つ「個人賠償責任保険」に加入していれば、賠償責任を保険が補償してくれるので安心です。
しかし、建物の設備が適切に整備されておらず、建物内で事故が発生し借主が怪我をした場合は、貸主の過失となり貸主に賠償責任が発生します。事故が手抜き工事によって起きた場合は、貸主に過失はなく責任を問われるのが建設会社や工事会社であるべきです。しかし、それとは別問題で貸主はいずれにしても建物の所有者として、借主に対して賠償責任を負うことになるため、注意が必要です。
自然災害で建物が崩壊した場合
日本は地震や台風など自然災害の多い国ですので、貸主は災害による被害や損失にもしっかり備えないといけません。地震や台風などでオフィスビルの窓が破損したり、壁に亀裂が入ることもあるでしょう。そのような場合は貸主の負担で破損箇所を修繕することになります。
しかし、自然災害が起きた場合に、貸主が責任を負うのは建物部分のみです。借主のオフィス機器や家具・金庫といった所有物まで責任は問われないため、その点は安心です。また、万が一災害で建物が全壊した場合も同じです。建物自体がなくなってしまった場合は、その時点で賃貸契約が効力を失います。そのため損害の責任を貸主は問われません。賃貸契約書には、そのような内容が記載されていることが一般的です。
自然災害が起きた場合は、建物の修復責任はありますが火災保険に加入していれば、保険が補償してくれます。借主も同じように契約と同時に火災保険に加入しますので、家財保険に加入していれば災害による家財の被害を補償してくれます。万が一オフィスビルが崩壊してしまった場合、借主の家財の責任までは問われませんが、借主の損失は甚大です。賃貸契約をする際は、万が一のことを考えて、借主にも「個人賠償責任補償」・「借家人賠償責任補償」・「家財保険」の3種類の補償がセットになった火災保険を選ぶことをすすめるといいでしょう。
オフィスビルの設備工事中にテナントが営業できない場合
オフィスビルを所有していると、建物の設備工事が必要になる時期も出てくるでしょう。工事の内容によってはオフィスや事務所・店舗の借主が設備工事期間中は建物を使用することができなくなることもあります。このような場合は、たった数日間でも借主にとっては業務や売り上げに影響することは避けられません。
そこで、その分の営業補償金を支払うよう要求してくる借主も出てくるかもしれません。営業補償金の支払い以外にも、賃料の減額を求めてくることもあるでしょう。そのような場合、貸主は要求に応じる必要はあるのでしょうか?
結果を言うと、貸主は借主に営業補償金を支払う義務はありません。なぜなら、建物に不可欠な補修や整備は貸主の義務だからです。法律上、貸主が建物の保持に必要な行為をすることを、借主は拒むことができません。貸主は建物の設備工事を行う正当な理由があるとして、貸主に借主の業務上の損害を負う必要はありません。
しかし、借主の賃料の減額請求には応じる必要があります。普通は、借主が賃料の減額を請求できるのは土地や建物の物価が低下した場合や、賃料があまりにも相場からはずれた場合のみです。しかし、借主側がオフィスや事務所を使用できない期間は、収益の補償として金銭を支払う義務はありませんが、営業停止日数分の賃料を差し引く義務は発生します。借主は、毎日営業できることを前提に賃料を払っていますので、利用できない日数分の賃料まで支払わせることはできません。
賃貸オフィスで借主が盗難被害に遭った場合
オフィスや事務所を賃貸していると、さまざまな責任を問われそうで貸主は不安になることもあるでしょう。借主が盗難被害に遭った時もその例です。
事務所やオフィスは週末や夜間に人出が減るため、その間に盗難被害に遭うことが多いです。特に、エントランスに防犯カメラを設置していない事務所や、警備員が24時間体制で常駐していないオフィスなどはターゲットになりやすいと言われています。被害に遭った借主は貸主のビルの防犯管理に問題があるとして貸主に被害の責任を問うかもしれません。
しかし、借主が盗難被害に遇っても、貸主が被害の責任を負う義務はありません。入居している企業は各自で、賃貸しているオフィスや事務所の防犯対策を行わなければなりませんし、借主はそのような事態に備えるために、火災保険に加入しておく必要があります。3種類の火災保険のうちの「家財保険」は、このような場合の被害を補償します。
しかしながら、複数の借主から防犯対策について強化の依頼があったり、すでに借主が盗難被害に遭っている場合は、防犯対策の強化を検討するべきではないでしょうか。借主が盗難被害に遭ったとしても、貸主は責任を問われませんが、そのような事件があったにも関わらず何も対処しないのでは、借主からの信頼を失ってしまいます。そのようなオフィスや事務所には、借主も長く入居したいとは思わなくなるでしょう。
末永くオフィスや事務所を賃貸していきたいなら、防犯対策に関してはできる限りの対処をするべきです。
貸主の修繕義務が発生しないケース
ここで、貸主の「修繕義務」についてお話ししましょう。修繕義務とはオフィスや事務所の貸主が賃貸している建物が収益化可能な状態にできるように、建物を修繕する義務です。
貸主の修繕義務に関しては、借主との理解の違いからさまざまなトラブルが生じやすいため、貸主に修繕義務が発生する場合としない場合を紹介します。
貸主・借主以外の人間による過失の場合
借主が故意に建物を損傷した場合は、責任は借主が負うことになります。では、借主のクライアントや宅配会社の従業員など、第三者が建物を破損した場合は、誰に責任が問われるのでしょうか。
この場合は、破損した本人に対して損害賠償を起こすことができます。建物を修復するのは第三者の責任で、貸主は修繕費用を一切出す必要はありません。
しかし、第三者に過失がないと判断される場合は別です。その場合は、貸主に修繕義務が発生します。例えば第三者が普通に道を歩いていたのに、後ろから来た自転車にはねられて事務所の窓に飛ばされ窓が破損した。このような場合は第三者に過失はないので、貸主が窓の修繕費用を出さないとなりません。
建物の修繕が高額な場合
貸主に建物を修繕する義務があるものの、建物によっては修繕が高額になる場合もあります。
例えば、築40~50年以上の建物で老朽化が進んでいると、場合によっては、修繕しても赤字になってしまいます。このような場合は、貸主に修繕義務は発生しません。建物の築年数や修繕工事の費用から、貸主に採算が取れないと判断された場合は、法律上貸主による修繕義務は発生しなくなります。
また、すでに老朽化した物件だとわかっていて、借主が賃貸契約をして入居した場合も、貸主に修繕義務が問われない場合もあります。
借主が備え付けたエアコンが故障した場合
賃貸しているオフィスや事務所には、備え付けのエアコンがある場合が多いでしょう。もし、備え付けのエアコンが故障した場合は、エアコンは物件の設備の一部とみなされるため、貸主が費用を負担して買い換える必要があります。しかし、借主の故意や不注意からエアコンが破損したのが明らかな場合は、貸主に修繕義務は発生しません。また、借主がもう一台オフィスや事務所にエアコンを設置しようと、自ら購入して設置したエアコンが故障した場合も、貸主に修繕義務は発生しません。さらに、エアコンが前の借主が残していった残置物だった場合も貸主に修繕義務はありません。
また、貸主にも何らかの理由があり、借主に設備の修理を依頼されていても応じられないことがあるでしょう。その場合は、借主自らが修理をすることが認められています。修理をしないと事業の利益に影響が出ると判断された場合です。この場合、かかった修理代は貸主に請求することができますので、その点は注意してください。
今回のまとめ
オフィスや事務所を賃貸するにあたって、貸主・借主のそれぞれの義務や責任について紹介しました。賃貸オフィスや事務所の賠償責任に関しては、貸主側・借主側のどちらかに責任が問われるかは微妙なケースもあります。比較的賃貸オフィスや事務所で起こりやすいケースを紹介しましたが、他にも判断が微妙になるケースは多く存在します。そのような場合は、弁護士に相談するといいでしょう。
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