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賃貸オフィス・事務所の退去時に必要な手続きとは?
事業が軌道に乗り、売上げが伸びてくると、従業員が増えオフィスが手狭になることがあります。事業拡大に伴って広い事務所に移転するということは、会社や事業所にとって喜ばしいですが、実際に移転するために現在使っているオフィスや事務所から退去する際にはさまざまな手続きが必要になります。
オフィスからの退去を円滑に進め、移転後も支障なく事業を継続できるよう、退去時に必要な手続きを確認しておきましょう。
【目次】
1.現在の契約書で解約予告時期を確認
2.原状回復工事の手配
3.引っ越し業者・処分業者の手配
4.取引先への連絡
5.登記内容の変更と官庁への届け出
6.今回のまとめ
現在の契約書で解約予告時期を確認
移転の検討を始める前に、まず入居中のオフィスや事務所の賃貸契約書を確認しましょう。確認するポイントは、解約予告の期間と方法、退去時の原状回復や保証金(敷金)の返還方法などです。契約満了で退去するのであれば、大きな問題にならないことが多いのですが、契約途中での解約は注意しないとトラブルに発展することがあります。実際に契約書を確認すると分かりますが、一般的に、解約する場合は何カ月前までに貸主に通知しなければならないのかが明記されています。また、契約期間や契約満了後の更新手続きについても書かれているはずです。契約満了を待たずに中途解約する際の取り決めもあり、通常は違約金を支払って解約することになっています。
事務所を解約するかどうかは借主の勝手ではないか、と思われる人もいるでしょうが、借主の立場になって考えてみましょう。例えば、2フロア分のオフィスを貸していた会社に「来月、移転するので今月末で退去します」と突然言われたらどうなるでしょう。たちまち、来月分からの賃料収入が入らなくなってしまいます。貸主側としては、そうした事態を避けるために、解約予告の期間を設けて違約金の支払いを求めているのです。そうすることで、次の入居者が決まるまでの間の収入を確保できます。
もう一つ、解約の予告期間で気をつけておきたいのは、契約の終了がどの時点になるかという点です。原状回復をして退去することになっている場合、通常は原状回復工事が完全に終了するまで契約を終了させることができません。このため、工事が期日までに終わらないと「契約終了までに明け渡しがなされなかった」として、賃料をめぐってトラブルになる可能性もあります。移転計画を立てる際は、契約書をよく見直して解約の通知の方法や賃料の扱いについて確認しておきましょう。中途解約する時期によっては、違約金の額が膨らんでしまうことがあります。
原状回復工事の手配
原状回復とは、入居時と同じ状態にまでフロアを修復することです。デスクやロッカー、カウンターなどはもちろん、フロアの敷物や天井、壁紙まですべて剥がして、契約前の何もなかった状態に戻さなくてはなりません。飲食店などでは「居抜き」と言って、内装を残してそのまま次の入居者に引き継ぐ形態もありますが、契約書に「原状回復」とあれば、原状回復工事が終わって始めて、貸主に明け渡すことができます。
契約終了の時期についての説明でも触れましたが、原状回復が完了しなければ契約の終了とはなりません。そのため、当初約束していた時期までに原状回復が終わらないと、遅延損害金を請求される恐れがあります。遅延損害金は、賃料の2倍相当となるのが一般的です。原状回復工事の手配は早めに済ませ、明け渡し時期には確実に終わるよう余裕を持っておくことが大切です。
工事期間は広さや内容にもよりますが、1カ月半は見ておいたほうがいいでしょう。また、工事業者を貸主が指定するケースも少なくありませんので、この点も確認しておきましょう。
引っ越し業者・処分業者の手配
移転には当然、引っ越し作業がつきものです。引っ越し業者の選定も急ぐ必要があります。事務所やオフィスの移転は、一般家庭の移転とは違い、情報機器など慎重に取り扱う必要のある備品が多く、特殊な機器を搬送しなければならないこともあります。このため、企業や事業所の移転を手がけた実績のある業者がいいでしょう。大手引っ越し会社は、大企業の移転にも力を入れていて、実績やノウハウがあります。そうした業者に依頼すれば間違いはないので、数社から見積もりを取って費用やサービス、移転計画などを比較して業者を選びましょう。
引っ越し業者の中には、原状回復工事や内装工事、処分業者の手配や折衝を含め、移転プロジェク全体を代行してくれる業者もあります。会社の規模によっては、移転は大事業となり、担当者の負担も重くなります。移転プロジェクトに精通した業者に任せることで、移転をスムーズに進められることもあります。
また、移転先で使わない古い備品などを処分してくれる業者の手配も忘れてはいけません。移転を機にペーパーレスに取り組むのであれば、重要書類を専門に扱う処分業者を選ぶ必要があります。
取引先への連絡
オフィスを移転すれば、当然、住所が変わりますし、移転先によっては固定電話の番号も変わります。取引先の銀行が変わり、入金や出金の口座も変更する必要があるかもしれません。移転によって、以前からの顧客が離れたりサービスが低下したりしないよう、顧客や取引先には余裕をもって移転予定日や新住所、取引銀行の口座などを知らせましょう。
取引できなくなる業者などには、これまでの取引に謝意を示したうえで、移転と取引の終了を伝えましょう。最近は移転の通知もメールで済ましてしまうことも増えましたが、ビジネスには礼節も大切です。丁寧にはがきで通知しておいて損はありません。こうした通知は、できるだけ早く行い、遅くても移転の1カ月前には出しておきましょう。
電話番号を変更する場合は、特に注意が必要で、移転先の電話番号が分からないと顧客が離れてしまいます。移転前の電話番号にかけた場合は、移転先の番号に転送されるように手続きを行っておくか、移転のアナウンスが流れるように手配をしておきます。
また、忘れがちなのが郵送物の転送の手配です。郵便局に届けておかなければ、古いオフィスに郵便物が届いたり、宛先不明で送り主に戻されたりしてしまいます。中に重要な書類が含まれていたら大変です。移転前の事務所に届いた郵便物を移転先に転送してもらうには、郵便局に転居届を提出する必要があります。転居届けは移転前から提出できるので、早めに手続きを済ませておきましょう。こうした電話や郵便などへの届け出などは、チェックリストを作っておけば確認も簡単です。
登記内容の変更と官庁への届け出
オフィスの移転後にも必要な手続きが数多くあります。主に所管官庁への届け出が必要なため、怠ると指導を受けたり処罰されたりすることがあります。早めに必要な手続きを洗い出して、移転前から準備しておきましょう。
移転に伴って本社や本店の所在地が変更になった場合、法人登記の内容が変更されたことを法務局に報告しなければなりません。変更から2週間以内に、管轄の法務局に変更登記申請書を提出します。申請には、株主総会の議事録や取締役会の議事録などが必要になります。
登記の変更手続きが終われば、税務署や労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所にも届けを出す必要があります。税務署には、所得税・消費税の納税地の異動に関する届出や給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出などが必要になります。小さな事業所や個人事業主で青色申告をしている人も納税地が変われば届けを出す必要があります。届けの提出先は、移転前の税務署で、法人の場合は移転完了後の登記簿謄本などもあわせて提出します。従業員を雇っている場合は、労働基準監督署に労働保険名称・所在地等変更届を提出し、労働基準法や安全衛生法に定められた届けを提出します。事業の内容や規模によって、必要な届けが異なりますので、労基署に必要な書類を確認しておきましょう。
従業員を雇っている場合は、雇用保険を管轄している公共職業安定所にも、雇用保険事業主事業所の変更届が必要です。記載内容を確認するため、営業許可証や登記簿謄本なども必要になります。年金事務所にも所在地変更の届が必要で、登記簿謄本のコピーを添付して提出します。こうした届には提出期限も設けられています。期限内に提出できるよう、しっかり準備を進めましょう。
このほか、会社で営業車や役員車などを保有している場合は、車の保管場所を確保していることを証明するため、自動車保管場所証明(車庫証明)の申請を警察署にしなければなりません。保管場所がなければ、車を所有できず、駐車場を確保しないまま車を所有していると「車庫飛ばし」として処罰されることがあるので、気をつけましょう。
今回のまとめ
移転などのため賃貸事務所・オフィスから退去するときには、さまざまな手続きが発生します。引っ越し作業ばかりに気を取られ、つい忘れがちですが、どれも移転後もトラブルなく事業を継続するために必要なものばかりです。特に官公庁への届け出は、法律で義務づけられているものがほとんどで、怠ると指導や罰則を受ける要因にもなってしまいます。法務局や税務署、事業を所管する役所にしっかりと確認をし、移転後すみやかに届け出などができるよう準備をしておきましょう。
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