COLUMN
お役立ち情報
賃借人が更新料を払わない場合、オーナーは更新を拒否できるのか?
賃貸借契約の期間満了後に同契約を更新する際、しばしば賃借人が支払いを求められるのが更新料です。しかし、更新料は法律で定められているわけではないということもあり、当初の契約期間が満了後も引き続き同じ物件に入居する予定の賃借人が支払いに応じないというトラブルも時折見られるようです。こうした場合、オーナー側は更新料の支払いがないことを理由にして契約更新を拒むことができるのでしょうか?
【目次】
1.そもそも更新料は何のため?
2.更新料の支払い義務は契約内容次第
3.更新料の不払いが契約更新拒否の理由となるかは、合理性の有無がポイント
4.今回のまとめ
そもそも更新料は何のため?
賃料とは別に発生する更新料は、賃料のように毎月出ていくお金ではありませんが、多くの場合2年ごとに訪れる契約更新タイミングのたびに支払わなくてはなりません。そして、そのように賃借人にとっては決して小さくない負担でありながら、そもそもどういった根拠によるものであるかがはっきりしない費用でもあります。諸説ありますが、更新手続きに対する手間賃とも、安めに設定された賃料を補うものとも、物件を今後も継続して提供してもらうことに対する謝礼ともいわれています。
しかし、現状を見る限り、古くからの慣習だからという理由で続けられ、オーナーにとっての臨時収入となっているというのが実態に近いといってよいでしょう。事実、更新料の概念さえない地域は多く、契約更新の際には更新料が必要というのは、それが慣習として根付いている地域に限られた話なのです。
更新料の支払い義務は契約内容次第
地域性があることからも明らかなように、更新料は法に定められているわけではありません。従って、賃借人に支払い義務が生じるかどうかは契約時に取り交わした契約書にその定めがあるかないかで決まります。
賃借人とオーナーの合意の上で契約が締結されていますので、契約書に更新料の記載があれば支払わなくてはなりません。反対に、たとえオーナーから更新料を請求されたとしても、契約書に記載がなければ支払う必要はないといえます。
更新料の不払いが契約更新拒否の理由となるかは、合理性の有無がポイント
では、契約書に更新料の記載があるにもかかわらず賃借人がその支払いを拒んだ場合、オーナーは契約更新を拒否できるのでしょうか。オーナー側から契約更新を拒否する場合、借地借家法の定めにより、契約期間満了日の1年前から6ヶ月前までの間に賃借人に対し「更新拒絶通知」を出すほか、“正当な事由”が必要とされています。つまり、賃借人が更新料を支払わないことが正当な事由となるかどうかが論点となってきます。この種のトラブルが法廷にまで持ち込まれた場合、一定の判決が出るとは限らず、ケース・バイ・ケースで一概にはいえません。
しかし、基本的な考え方としては「取り決め内容に合理性があれば支払い義務が生じる」というものであり、合理性があるというのは具体的には「社会的に見て妥当な金額」「相場に照らして特に高額ではない」といったことになります。そうした合理性のある義務の不履行は、契約更新拒否の正当な事由として認められる可能性があるといえるでしょう。実際に、更新料の不払いが契約解除の正当な事由とするに足ると示唆する判決も出ています。しかし、その逆の判例もあり、解釈は一様ではありません。
ただし、法定更新(自動更新に関する記載が契約書になく、両者とも異議のない状況で期間満了を迎えた場合に、特段の更新手続きなしに契約が自動的に延長されること)となった場合には更新料の支払い義務は生じないとする判決が近年は多い傾向です。
今回のまとめ
更新料はあくまで任意で定められるものであるため、払う払わないのトラブルも少なくありませんが、判例にはバラつきが見られるのが現実です。そのため、賃借人が更新料を払わない場合にオーナーが契約更新を拒否できるかどうかは一概にはいえません。とはいえ、更新料に関する定めが契約書にあり且つそれが妥当な金額といえるのであれば、更新契約の条件として更新料の支払いを要求できるという考え方は認められる可能性があるでしょう。