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賃貸オフィス・賃貸事務所は保証人への情報提供が義務付けられます
2020年4月に民法改正に伴い、賃貸借契約での保証人に関連する規定にも変更がありました。今回は、改正民法で新たに義務付けられた「保証人に対する情報提供」について確認します。
【目次】
1.民法改正による保証人の保護強化
2.提供義務のある情報の種類
3.提供義務のある情報の内容
4.情報提供義務を怠った場合
5.今回のまとめ
民法改正による保証人の保護強化
オフィスや事務所を借りる際には、賃料滞納や損害賠償などが起こった場合の貸主側の保険として、保証人を立てるよう求められます。しかもほとんどの場合、責任の非常に重い連帯保証人です。しかし、それほどまでに責任の重い連帯保証人でありながら、借主についての情報の提供はあまりない状況であったため、借主の倒産などに際し想定していなかったレベルの負担を強いられる連帯保証人が少なくありませんでした。
そうした背景から、2020年4月の民法改正では保証人を保護する必要性が考慮され、契約締結前および契約締結後の情報提供が義務付けられることとなりました。
提供義務のある情報の種類
保証人への提供が義務付けられている情報には、次に挙げる2種類があります。
① 借主の財産に関する情報
② 借主の債務履行に関する情報
上記①は賃貸借契約締結前、②は契約継続中に提供されます。
提供義務のある情報の内容
賃貸借契約締結前、契約継続中にそれぞれ提供することが義務付けられている情報の内容詳細は次のとおりです。
①借主の財産に関する情報
事業用物件の賃貸借契約における保証人候補が個人であり、且つその人物が借主(法人)の経営陣ではない場合には、借主の財産がどういった状況であるかを知らせなくてはなりません。具体的には次に挙げる4点の情報を提供します。
・ 借主の保有する財産
・ 借主の収支状況
・ 借主の他債務の有無とその履行状況
・ 借主の担保(保証金など)があればその事実および内容
保証人候補は、提供されたこれらの情報を勘案しリスクを推測した上で、保証人となるかを検討できるようになりました。
②借主の債務履行に関する情報
契約継続期間中に保証人から問い合わせがあった場合、貸主は借主の債務(賃料支払など)の履行状況を知らせなくてはなりません。具体的には、賃料支払の遅延や滞納がないか、何らかの違約金が発生していないか、損害賠償が考えられるような状況にはないかといった内容です。こまめにチェックすることで、保証人に債務の履行が求められる段階になって初めて事態を把握し慌てるといったことを避けられるでしょう。
なお、この義務は、物件が事業用か居住用か、保証人が法人か個人かに関わらず、すべての賃貸借契約に適用されます。
情報提供義務を怠った場合
借主の財産についての情報が適切に提供されないことが原因で誤認が起き、その誤認内容に基づき保証契約が結ばれた場合はどうなるのでしょうか。民法では、情報提供が適切に行われていないと貸主が知っている(または知ることができる)場合に限り、契約を取り消すことができると規定しています。
今回のまとめ
賃貸オフィス・賃貸事務所の賃貸借契約を結ぶ際に立てる保証人は、民法の改定後、情報提供を義務付ける規定により保護されるようになりました。借主と貸主の両者ともその義務を負います。万一の場合には大きな責任を追うことになるのが保証人の立場ですので、借主本人や貸主から提供される情報は大変貴重な判断基準となるといえるでしょう。