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2021.05.26

賃貸オフィス・賃貸事務所でも造作買取請求はできる?

賃貸借契約において借主に認められている権利は複数ありますが、そのうちの一つが「造作買取請求権」です。今回は、賃貸オフィス・賃貸事務所における造作買取請求について解説します。

【目次】
1.造作買取請求とは
2.造作買取請求は賃貸オフィス・賃貸事務所でも可能
3.造作買取請求の対象となるものは?
4.造作買取請求権を行使できないケース
5.今回のまとめ

造作買取請求とは

造作買取請求とは、貸主の同意を得た上で借主が建物に付加した造作がある場合、退去時にその造作の時価での買い取りを貸主に請求することをいいます。これは借地借家法第33条に規定されている借主の正当な権利であり、要件を満たしている限り、貸主はその請求を受け入れて造作を買い取らなくてはなりません。

造作買取請求は賃貸オフィス・賃貸事務所でも可能

借地借家法は、居住用の物件であるか事業用の物件であるかを問わず、すべての賃貸物件に適用される法律です。そのため、借地借家法に規定されている造作買取請求権は賃貸オフィス・賃貸事務所のケースにおいても有効で、借主は貸主に対し買い取りを請求できます。

造作買取請求の対象となるものは?

買い取り請求の対象となるのは、大まかに言えば、次に挙げる3つの要件全てを満たしている造作です。

① 建物に作りつけられている。
② 借主が所有している。
③ 建物に客観的な便益を与えている。

具体例としては、天井埋込み型の業務用空調設備、もともとついていた貧弱なドアと交換した頑丈な扉、便器に取り付けた温水洗浄便座などが挙げられるでしょう。
借主には原状回復義務があり、作りつけた造作は退去時に撤去するのが原則ですが、「建物の価値や利便性を高める」という特性が該当するものに限っては買い取りという選択肢を与える例外規定といえます。

造作買取請求権を行使できないケース

借主が貸主に対し買い取りを請求できないケースもあります。具体的には次に挙げるようなケースが考えられるでしょう。

建物から取り外されても価値が減少しないものである場合

テーブルや椅子、キャビネットなどの家具・什器類は、その建物でのみ真価を発揮する性質のものではなく、簡単にどこへでも移動させることができ、移動先でも同じように利用可能です。そうしたものはそもそも「建物に付加された造作」とはいえず、買い取りの請求対象とはなり得ません。

建物の価値や利便性を客観的に高めるものではない場合

建物の価値や利便性を客観的に高めるとはいえないもの、つまり特定の用途や業態でのみ利便性が得られる造作については、買い取りを請求できない場合が多いでしょう。
たとえば、フロア固定タイプのカフェテーブルは、カフェやバーなどを営業するのでなければかえって邪魔となるでしょう。あるいは、掘りごたつ式の小上がりは、居酒屋でなければあまり利用価値はないでしょう。こういったものについては、請求権行使の対象となりづらいと考えられます。

借主が所有しているとはいえないものである場合

建物と切り離して考えることができない状態のものについては、買い取りを請求できません。たとえば、壁内に充填した断熱フォームは建物の一部となっているといえ、買い取りを請求できません。(ただし、ここでは詳述しませんが、有益費償還請求権の対象となる可能性があります)

造作買取請求権を放棄する旨の特約がある場合

契約中に「賃借人は造作買取請求権を放棄する」といった内容の特約が設けられている場合は、請求権を行使できません。ただし、規定が改定される前(平成4年8月1日よりも前)に締結された賃貸借契約の場合には、そうした特約は無効とされます。

設置に当たり貸主の同意を得ていない造作である場合

造作買取請求は、貸主の同意を得た上で作りつけられた造作であることが前提となっています。そのため、貸主の同意を得ずに設置されたものについては買い取りを請求できません。

今回のまとめ

造作買取請求は、借主が建物に作りつけた造作の買い取りを貸主に請求することを指します。一定の要件を満たしていれば、貸主に買い取りを拒否する権利は認められせん。ただし、造作買取請求権を放棄する旨の特約が存在する場合は、その特約に従い、借主は権利を主張できない点に注意が必要です。
この制度は、退去時に手間と費用をかけて撤去することが借主・貸主双方にとって利益とならないようなケースに役立つといえるでしょう。

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