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2021.05.24

賃貸ビルにおける耐震基準の考え方

日本は、言わずと知れた地震大国です。そのため、建築物には地震に対する耐性が求められ、建築基準法により耐震基準が定められています。しかし、耐震基準適合と実際に地震が起きた際の安全性との関係性については、曖昧にしか理解されていないことも少なくないようです。今回は、賃貸ビルにおける耐震基準の考え方を、その内容や性質を交えながらご紹介します。

【目次】
1.耐震基準改定タイミング以降なら耐震性が高め
2.新耐震基準の目指す「現実的な安全性確保」
3.耐震基準は「ビル内の人が助かる確率」を上げるための目安
4.今回のまとめ

耐震基準改定タイミング以降なら耐震性が高め

改定後の新耐震基準をクリアしているビルであれば、地震の際の安全性は比較的高いと考えられます。一般住宅からオフィスビルに至るまで適合していることが必要な耐震基準は、簡単に言えば「地震が起きても容易には壊れない」と考えられる設計となっているかを判断するものさしです。
いくつもの大地震が発生する中で、その被害状況を受けて基準は随時改定されていますが、とりわけ大きな変更となったのが、1981(昭和56)年に実施された建築基準法改正に伴う改定です。同改定は、多くの家屋が倒壊して大きな被害が出た1978年(昭和53年)の宮城県沖地震を教訓として、より厳しい内容としたものです。それ以前の耐震基準(旧耐震基準)では震度5程度の地震にも耐えられることが求められていたのに対し、新しい基準(新耐震基準)では震度6強〜7程度の大きな地震でも倒壊しないことも併せて求められるようになりました。建築予定物の合法性を公的にチェックする建築確認には、耐震基準を満たすかの審査も含まれるため、改定後(1981年6月1日以降)に建築確認申請が受理された建築物はすべて新基準を満たしているということになります。
より高い安全性を望むのであれば、基準改定後に認可を受けて建てられているビルであることを条件にして物件を探すとよいでしょう。なお、旧基準に基づいて建てられていても、その後の耐震補強工事により新基準に適合するレベルの耐震性を備えているビルもあります。

新耐震基準の目指す「現実的な安全性確保」

新耐震基準は旧基準に比べ、より実情に即した内容となっており、最終的な人的損害をどれだけ抑えられるかに重きを置いています。耐震性の実現には、鉄筋の数を増やすなどして頑丈にする従来工法に加え、建築物がまともに振動を受けないようにする免震構造や、ダンパーで揺れを軽減する制震構造なども併用されるようになってきています。
中規模地震の震度5程度のであれば、ほとんど無傷の状態を保てるオフィスビルは今日では珍しくないでしょう。それでもなお、大規模地震の震度6強以上の激しい揺れを受けても損傷が一切ないレベルを目指すのは現実的ではありません。それを踏まえた上で、大規模地震の際にダメージは受けてもいきなり倒壊するようなことがなく、ビル内にいる人たちが脱出できる状態を維持できるという点を重視しているのが新基準の特徴です。

耐震基準は「ビル内の人が助かる確率」を上げるための目安

いかにも古く、旧耐震基準しか満たしていない賃貸ビルよりも、新基準を満たした新しい賃貸ビルのほうがより安心感があるのは確かです。しかし、基準を満たしているからといって地震の際の身の安全が約束されるわけではありません。耐震基準はあくまでも、ビル内にいる人たちが命を落とさずに済む確率を上げるための目安または条件と考えましょう。タイミングを含む数え切れないほどの要素が影響し合い、想定外の事態も起こり得る災害時に明暗を分けるのは、多くの場合「日頃の備え」なのです。

今回のまとめ

耐震基準改定(1981年)以前に建てられたビルとそれ以降に建てられたビルとでは多くの場合耐震性に差があります。そういった意味では新しい耐震基準を満たしたビルを選べばより安心といえるでしょう。しかし、基準を満たしていることは、その建物が「大地震の際にも即座には倒壊しないと考えられる設計」であることを示しているに過ぎず、安全を保証するものではありません。高度な耐震性を謳っているビルだからと安心しきってしまうのではなく、そのおかげで最初の大きな揺れを乗り切れた後にいかに行動するかを常に見据えておくことが何より大切であるといえるでしょう。

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