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防火管理者・防火管理講習とは?選任が必要ない建物についても解説
オフィスや事務所に入居していると、消防についての知識が必要なシーンがたびたびあります。飲食店以外では火災のリスクは少ないと思われがちですが、電源系のトラブルなど予想外の原因で火災が発生することもあります。
建物全体で適切な取り組みを行い、火災予防に努める行動が求められます。
この記事では、防火管理者の選任義務と「防火管理講習」について解説します。
条件によっては防火管理者の選任が不要な建物もありますので、そちらについても説明します。
【目次】
1.防火管理者とは
2.防火対象物とは
3.防火対象管理者の設置義務
4.防火管理者の業務内容
5.今回のまとめ
防火管理者とは
防火管理者とは、消防法で定められた国家資格で、火災被害を予防するための管理・監督業務を担う責任者のことです。
すべての建物の防火管理者になれる「甲種防火管理者」と、甲種未満の建物の防火管理者になれる「乙種防火管理者」に分かれていますが、いずれも指定された講習を受講して効果測定試験に合格すれば資格を取得できます。講習の日数は原則、甲種で2日、乙種で1日です。
また資格自体に有効期限はありませんが、不特定多数が出入りする施設では、収容人数等の条件や防火管理者の資格取得方法により、定期的に再講習を受けることが義務付けられています。
※消防職員や大学や短大で防災に関する科目を履修した実務経験者は、講習が免除されることがあります。
関連記事:防火管理者の資格を取得するには?費用と流れについて
防火対象物とは
不特定多数の人に利用される山林、船舶、建築物、地下街などを総称して、消防法では「防火対象物」と呼びます。
防火対象物は「特定用途」と「非特定用途」に分類されます。
特定用途の防火対象物
不特定多数の者が出入りする施設や火災時の避難誘導が困難であることが予測される施設は、特定用途の防火対象物として分類されます。
前者の定義では、飲食店、デパート、ホテル・旅館、地下街など。後者の定義では、病院、老人福祉施設、幼稚園、特別支援学校などが該当します。
非特定用途の防火対象物
特定用途の防火対象物以外が、非特定用途の防火対象物です。オフィスや事務所、倉庫、小学校・中学校・高校・大学などは、こちらにあたります。
複合用途防火対象物
1階が飲食店で2階以上がオフィスなど、複数の用途で使われている施設のことです。
防火対象管理者の設置義務
防火管理者の設置が必要かどうかは、防火対象物の用途や規模により消防法で定められています。複合用途の防火対象物の場合は、より基準の厳しいほうが適用されます(例:飲食店とオフィスが入っているビルの場合は、飲食店の基準を適用)。
なお、各市町村ごとの火災予防条例で別途定められていることもあるので、そちらも確認してください。また、建築物の高さや階数によっては統括防火管理者(建物全体を管轄する防火管理者)を設置する必要があります。
- 特定用途の防火対象物のうち、火災発生時の避難が著しく困難な施設(老人ホーム、乳児院、障害者入所施設等)※:
収容人数10人以上(300㎡以上は甲種、300㎡未満は乙種)
地上3階を超える場合は、統括防火管理者が必要 - 特定用途の防火対象物のうち、上記以外:
収容人数30人以上(300㎡以上は甲種、300㎡未満は乙種)
地上3階を超える場合は、統括防火管理者が必要 - 非特定用途の防火対象物:
収容人数50人以上(500㎡以上は甲種、500㎡未満は乙種)
地上5階を超える場合は、統括防火管理者が必要
※詳細は、消防法施行令別表第一(6)項ロに掲げる防火対象物を参照
統括防火管理者が必要なケースとは
複数の店舗や企業が入居しているような施設では、防災の責任を負う人(管理権原者)が複数に分かれていることが多いです。
以下の条件に当てはまる場合は、収容人数や階数にかかわらず統括防火責任者を置く必要があります。
- 高さ31mを超える高層建築物
- 消防法施行令別表第一(16-2)で定める地下街のうち、消防長又は消防署長が指定するもの
- 消防法施行令別表第一(16-3)で定める準地下街
防火管理者が必要ない建物とは
上記条件にあてはまらない以下の施設は、防火管理者の設置義務はないということになります。しかし、防火・防災の知識が不要だということではないので、備えは怠らないようにしましょう。
- 収容人数30人未満の特定用途防火対象物(老人ホーム、乳児院、障害者入所施設等は10人未満)
- 収容人数50人未満の非特定用途の防火対象物
建築中のビルや建造中の船舶は?
まだ営業開始されていない建築中のビルや建造中の船舶にも、多くの工事関係者が出入りします。
収容人数や用途によっては防火管理者の設置が必要になります。
防火管理者の業務内容
防火管理者の中心的な業務は、消防計画の作成です。計画のフォーマットは、消防署が公表しており、必要事項を記入して作成します。
オフィスにおいては、
- 消防用設備の点検、整備
- 避難施設(避難はしご、避難経路など)の維持管理
- 防火用設備(防火戸・防火シャッターなど)の維持管理
- 防火、防災教育
- 自衛消防活動および自主検査
- 消防機関との連絡
- 防火管理業務の一部委託
など、内容は多岐にわたります。
これらの項目から、各オフィスの事情に合わせて計画を立てていきます。
今回のまとめ
条件によっては、必ずしも防火管理者を選任する義務はありません。しかし、義務がないとはいえ、防火管理者は設置しておきたい役職です。
防火知識を持っている防火管理者は設備の点検ができるので、設備の不具合を事前に見つけられる可能性が高いです。また、火災発生時に従業員の安全を守る行動を取れるからです。
オフィスでの火災は、喫煙だけでなく、OA機器やホコリの発火など、予想もしない原因で起こることがあります。管理者以外の従業員も、常に防火・防災への意識を持ち、万が一の事態に備えることが重要です。