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賃貸中のオフィス・事務所が実は事故物件だった場合は解約できるのか
オフィスや事務所を探す際、まず注目するのは賃料やエリア、フロアの広さなどですが、それ以外に「事故物件」かどうか、を気にする人も多いのではないでしょうか。特に、人が死亡した事件や事故の現場は敬遠されがちです。一方、そうしたことをあまり気にせず、「家賃を安くしてもらえるのなら入居を考えてもいい」という人もいます。
それでも、事前に知らされ、納得して契約を済ませたのならともかく、後から周囲に「そこは事件のあった物件ですよ」と知らされるのは嫌なものです。もし、事前に事件・事故のあった物件であることを知らされなかった場合、契約解除を求めることができるのでしょうか。
【目次】
1.「事故物件」とはどんな物件?
2.「事故物件」は告知しなければならない?
3.「事故物件」だったことが分かれば契約解除できる?
4.今回のまとめ
「事故物件」とはどんな物件?
事故物件を法律的に言うと「心理的瑕疵」のある物件です。「瑕疵」とは傷のことで、心理的な負担に感じる、平たくいえば「入居したくないな」と思ってしまう物件という意味になります。よくあるのは、殺人事件や死亡火災事故の現場だったというケースですが、近所に指定暴力団の事務所がある、騒音などが発生する工場があるといった場合も、広い意味で「心理的瑕疵」として扱われます。また、高齢者の孤独死の現場も、入居者から敬遠されます。しかし、何をもって事故物件と呼ぶのかは、法で定められた基準はなく、境界線は業者の判断に委ねられているのが実情です。
たとえば、事件後10年以上が経っても条件を下げなければならないようでは、家主も困ります。このため4、5年が経過したり、別の人が入居して何ごともなく数年過ぎたりすれば、普通の物件として扱うことも多いようです。
「事故物件」は告知しなければならない?
賃貸借契約を結ぶとき、オーナーや仲介業者は相手側に対し、契約締結の内容を検討するのに必要な情報はすべて提供しなければなりません。これを「告知義務」といいますが、その中には「心理的瑕疵」にかかわる情報も含まれます。事故物件かどうかは必ず、借り手側に伝えなければならないのです。仮に事件や事故から数年が経過し、貸し手側が「告知する必要はない」と判断していても、借り手側から「過去に事件・事故の現場となったことはありませんか」と聞かれれば、知っていることは正直に答えなければなりません。
告知は法律で定められた義務です。過去の事件など契約上、不利になることを意図的に隠していた場合、借り手側は契約を解除することができます。また、告知を怠った仲介業者は行政処分の対象となることがあります。
「事故物件」だったことが分かれば契約解除できる?
事故物件であることを知らされないまま、賃貸借契約を結んでしまい、実は以前に事件や事故の現場になったことが後から分かった場合、借り手側は告知義務に反したことを理由に契約解除を求めることができます。それだけではなく、オフィス・事務所の移転・開設に要した費用や契約締結のための事務費用、新たな移転先を探すための費用、慰謝料などを請求することも可能です。
これに対し、貸し手側が「年月が経っていて告知の対象ではないと判断した」と言って契約解除を拒否することがあります。その場合は裁判となりますが、よほどの事情がない限り、貸し手側の主張が認められることはないようです。
今回のまとめ
事故物件かどうかをあまり気にしない場合はともかく、過去の事件・事故を知らないまま賃貸契約を結んでしまわないよう、契約の際には事故物件かどうかをしっかり確認しなければなりません。オフィスは快適に働くための空間です。契約前には「心理的瑕疵」の要因がないことをしっかり確認しましょう。