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法人設立時には必ずオフィスを構えて住所を持たなければならないのか?
法人登記する際には会社住所の届け出が必須です。これは、オフィスを構える必要があるということを意味するのでしょうか?
今回は、法人設立時には必ずオフィスを構えて住所を持たなければならないのかについて解説します。
【目次】
1.法人設立時には必ずしもオフィスを構える必要はない
2.法人設立時に自宅住所を利用する際の注意点
3.バーチャルオフィスという選択肢
4.今回のまとめ
法人設立時には必ずしもオフィスを構える必要はない
法人設立時に必要なのは「オフィス」ではなく、あくまで「住所」であるため、必ずしもオフィスを構える必要はありません。法人登記を行う際の住所の性質に関する制限はないため、よくイメージされるような「オフィス」の住所である必要はなく、自宅の住所でも知人宅の住所でも構わないということです。
法人設立時に自宅住所を利用する際の注意点
設立する法人の本店住所に自宅住所を利用して「自宅兼オフィス」とすれば、引っ越しは不要、賃料などのコストもかからず大変手軽ですが、注意点もあります。
賃貸住宅の場合は契約違反となるケースが多い
自宅が持ち家ではなく賃貸住宅の場合、会社の住所として登記すれば契約違反となってしまうケースがほとんどですので、注意しましょう。賃貸物件の契約書には、物件の利用用途を住宅に限定する旨の記載があることが大半です。どうしても自宅をオフィスとして登記したい場合は、大家さんの承諾を得る必要があります。来客などもなく、家の中で自分ひとりがパソコンに向かって仕事をするだけといった性質の事業であれば、許可してもらえる可能性もあるでしょう。
なお、利用用途を住宅に限定する旨の記載が契約書にない場合でも、後々のトラブル防止のため大家さんに前もって相談しておくのが無難です。
マンションの場合は管理規約違反となる可能性がある
マンション住まいの場合、たとえ持ち家であっても、自宅住所で法人登記すると管理規約違反となる可能性があります。多くの分譲マンションでは、居住用として以外の利用が管理規約で禁止されているためです。とはいえ、賃貸住宅の場合と同様に、外から見る限り住宅として利用している状態と何も変わらない種類の事業であれば、許可を得られる可能性もあります。管理組合に相談してみましょう。
自宅住所を公開するためプライバシーの問題がある
法人登記されている住所は、誰でも閲覧可能な公開情報であるため、自宅住所が広く公開されてプライバシー上の問題が出てきます。
用途地域によっては制限がある
法人設立のタイミングで自宅をリフォームしようとしている場合、用途地域によっては建築基準法の制限に抵触する可能性があります。もっとも制限の厳しい第1種低層住居専用地域では、オフィス兼用住宅の場合、事業場部分の床面積が50㎡以内かつ延べ面積の1/2以上が居住用でなければ建築が認められません。こうした建物の用途の制限は、新築時だけでなくリフォーム時にも適用されますので、注意しましょう。
バーチャルオフィスという選択肢
オフィスを構えず身軽に法人設立したい場合には、バーチャルオフィスの住所で法人登記するという選択肢もあります。バーチャルオフィスとは文字通り「仮想事務所」ですが、届いた郵便物や電話の転送、秘書代行サービスなどが提供されている場合も多いです。来客が見込まれる業種でなければ、見栄えのする都心の一等地の住所を低コストで会社住所として登録できるという点でも利用価値は高いといえるでしょう。
ただし、実体のある事務所が認可の条件となっている一部の業種(人材派遣業、不動産業、いわゆる士業など)では、バーチャルオフィスでは行政機関の認可を受けられませんので、注意が必要です。また、バーチャルオフィスでは法人銀行口座の開設が難しい、なかなか融資を受けられないといったデメリットも考慮しなくてはならないでしょう。
今回のまとめ
法人登記の項目である本店住所を自宅住所とすることに、法令上は何の問題もありません。しかし、賃貸住宅や分譲マンション、バーチャルオフィスの住所を利用した場合、法令上は問題がなくても、個々の規約上の問題や各種デメリットが考えられます。そうした点も十分に考慮した上でオフィスを構えるかどうかを検討しましょう。